とじき雑感

離職率から考える

    ある時、厚生労働省のサイトで「離職者統計」を調べたことがあります。
    
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    平成22年の常用労働者の動き
    平成22年1年間の入職者数は、631万人、離職者数は、643万人となっている。この結果、常用労働者数は、事業所の新設や閉鎖等の影響を除き、12万人(同0.3%)の減少となっている。(厚労省資料)
    
    日本の平成22年常用労働者数は4425万人で、年間に600万人を超える人たちが、入職や離職をしていることになります。その中で産業別「離職率」を見てみると「宿泊業、飲食サービス業」が最も高く27%、次に「生活関連サービス業、娯楽業」が22%です。逆に離職率が低いのは「製造業」や「建設業」で、離職率は10%くらいです。産業によって倍近く離職率が違うことが分かります。
    なぜこのように離職率が違うのか。それには、採用後の「教育訓練」に差があるようです。
    「製造」や「建設」では、新入社員を育てる際に、一段ずつ階段を登るように、「段階的教育」を行います。つまり、新人として基本的に知っておかなければならないことから始まり、その後経験や年齢に応じてレベルを上げていきます。それに対して「サービス系企業」では、実践の中で教育訓練をします。最低限のことを教えたら、即現場に配置し、そこで「経験」させながら教育訓練をします。ベテラン社員に交じって業務を覚えるわけですが、接客が業務ですから、最初から100%の成果を要求されていることになります。
    
    どちらの方法が良いのか、という質問は意味がありません。業種が違うわけですから、方法論が異なるのは当たり前のことです。ただそこに「丁寧さ」があるかどうかは重要な違いかもしれません。一般的に「製造」や「建設」は工程的なプロセスの中で製品やサービス提供を行うために配置換えが容易です。それに対して「サービス業」は、瞬間の中でサービス提供を行わなければならないので、教育訓練を行う「場面」がきわめて少ないのです。そうした職場環境の違いの中で、きちんと人を育てるためには、何よりも「丁寧さと緻密さ」が要求されます。
    もうひとつ、「製造」や「建設」では、代わりの人間が手配しにくく、逆に「サービス系企業」では、代わりはいくらでもいる、という思い込みの違いにも離職率が違う原因がありそうです。そうした思い込みが教育訓練から「丁寧さや秘密さ」を奪わせている理由でもあります。
    
    いずれにしても「新しい血(人材)」を入れられない組織は滅びる以外に道はないので、組織運営上、こうした教育訓練に関する仕組みの見直しは重要なことになりました。価値観の多様化も随分と進み、組織によっては「目的の共有」もできなくなり始めています。春先の「とじき塾」のテーマは、【組織の教育訓練を再確認する】がテーマでした。離職率の違い、世代間の意識の違い、正しい教育訓練のあり方などをこれからの研修の中にも入れたいと思っています。
    参議院選挙以来、外交や政治の風景が変わり、経営環境も大きく変化してきました。変化が分かっているのですから、それに対する備えも対策も急がなくてはなりません。

    急げ!急げ!

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