ここひと月ほど、以前に書いた文章を読み返していました。
現在(いま)を知るためには、過去を知らねばならず、未来(さき)を知るためにも、過去を知らなければなりません。
日常はいつも慌しく、過去を振り返る余裕はなかなかありません。自分が10年前に何を考えていたのかも日常の慌しさの中では知りようがないのです。何かの出来事があって、その時何かを考え、何かを感じたはずなのですが、それが朧(おぼろ)になってしまっています。せめて、以前書いた文章からもう一度「プロセス」を確認しておかないと、これからの「戦場」で戦えないのではないか・・・。
「未知なる世界」が始まっています。
いままでの「誰かの判断」を参考にして、自分や組織の未来(さき)を考える、という「甘い」時代は終わっています。昨日の「コラム」に書いたように、これからは「自分で決める」時代なのです。震災からひと月以上たつというのに、被災地では避難所暮らしを続けている人が十万人以上います。1千億円以上の義捐金が集まりながら、その配分すらまだ出来ていません。公共料金の利用者から逆算すると、今回の死亡者は「5万人」と言われているにもかかわらず、メディアの報道は2万数千人で止まったままです。震災で生き残りながら、避難先で死亡する人々の数も千人近いという話もありながら、これまた伝えられることはありません。(読売新聞の記事では病院での死者数だけで282人に上っています)
何よりも、原子力保安院では先月の段階で分かっていた「レベル7」という原発事故の評価が、統一地方選挙後に発表される無様さと惨めさは例えようがありません。「国民の生命を守る」というもっとも基本的なことですら、この国では当てにできなくなっているのです。「水」と「食物」と「空気」に注意を払わなければ生きていけない時代が来ているのです。海外での日本製品への不信はますます高まり、日本で作られた「シャンプー」まで中身を検査してからでないと輸入させてもらえない、という現実など日本人の多くは知りません。中国では、12都県(福島、群馬、茨城、宮城、新潟、長野、埼玉、山形、山梨、千葉、栃木、東京)からの食品や飼料の輸入を禁止しています。東京都内のオフィスの空室率は上昇し、オフィスの平均賃貸料は下落しています。
さまざまな要素が、複雑に絡み合いながら、「未知なる世界」が目の前に広がりつつあります。
昨年末に、こんな文章を書いています。
2011年は、戦後(1945年)から66年目にあたります。日本の近代化が始まった明治維新(1868年)から143年目に当たります。源頼朝が鎌倉幕府を開いて、終わるまで
の期間は「141年」ですから、すでに「ひと時代」のサイクルが終わっていると考えなければなりません。
昭和20年生まれの人が66歳の時、その子供が25歳の時に生まれていれば、41歳です。その子が25歳で子供を作っていれば、孫は16歳になります。つまり、今の時代は、
「3世代」が共存した時代ともいえます。親と子供の間では話ができたとして、祖父と孫の世代ではどうでしょうか。祖父の話は伝わらず、孫の話は理解できない、とい
うのが現実でしょうか。多くの企業と関わりを持っているのですが、実はこの「3世代」にまつわる格差は、組織の経営の中でかなり大きなものになりつつあります。時代が大きく動いているにも関わらず、組織の仕組みのあちこちに「祖父の時代」の仕組みや「父親世代」の仕組みが残っているのです。そして、顧客が「孫世代」であ
ることに気付いていない・・・・。
時代に合わないものは、すべて「淘汰」される運命にあります。コミュニケーションや情報共有の仕組み、顧客や現状の分析方法、課題解決技術や教育訓練の仕組みなど、「旧い」仕組みを残していては、時代に取り残されてしまいます。例えば「情報収集技術」に関していえば、旧世代は、淡白です。業界トップの組織や異業種の取組みに関して、無関心です。
「大手企業だからできていることだから・・・・」
「われわれの業種ではそれは無理だ・・・」
最初から、「時代の最先端」のものを、自分達と無関係なものだと思い込み、無関心でいます。
実は、この【無関心さ】が、時代不適業組織の原因となっています。
無関心でいるので、グローバルな世界の動きについての理解が進まない。
無関心でいるので、顧客の心の動きに気付かない。
無関心でいるので、組織内の不満や不平に気付かない。
この【無関心さ】が、本来その組織が持っている本当の力を殺しているのです。家電販売の先頭を走るヤマダ電機の従業員の平均年齢をご存知でしょうか。29.8歳です。こうした数字を知った後、自分の組織の平均年齢と比べてみてください。
世界の携帯電話の「3台に1台」がスマートフォンだということをご存知でしょうか。その数字を知った上で、社員達の携帯電話の種類を調べてみてください。
TUTAYAというレンタル業界の最大手は、すでに店舗を持たなくても、レンタル事業を展開できるだけの「準備」ができているそうです。現在「店舗展開」をしているのは、WebやNetの仕組みをよく理解していない「中高年の顧客」に対応しているだけで、時期をみて、事業戦略を大きく転換するそうです。源頼朝が鎌倉幕府を開いて、終わるまでの期間は「141年」ですから、すでに「ひと時代」のサイクルが終わっていると考えなければなりません。
2011年は、21世紀に入って10年後の世界です。この10年間、日本の多くの組織は、眠っていたとしか言いようがありません。昔の仕組みをどこかに引きずり、昔の言葉で経営を語り、昔の言葉で教育訓練を行い、昔の考えで事業を行っていました。
2010年の反省は、2000年からの10年間の「反省」を含まなければなりません。この10年間、組織や個人は、時代に合わせる努力をしてきたでしょうか。
自省を込めて、この年末を過ごす必要があります。忙しさにかまけて、10年間の「反省」を忘れないようにしたいと思います。
(2010年12月13日発行 南風通信より)
さて、「未知なる世界」の扉が開いています。
覚悟して、「一歩」を踏み出さなければなりません。