s_pic_renault1003_n毎月、帝国データバンクの情報誌に経営コラムを寄稿しています。
昨年(2013年)の11月に掲載された文章を再録します。

 

経営の「時間軸」

大正元年は西暦で言えば1912年のことで、今年は「大正101年」に当たります。100年企業をリアルに想像するとすれば、大正の初めから現在までの時間を経てきた企業ということになります。昨年、創業100年を迎えた企業の記念式典に参加しながら、その途方もない時間の量に圧倒されたような気分になりました。  1929年の世界恐慌、それを挟んだ二度に及ぶ世界大戦、1945年の敗戦と混乱、ニクソンショックやオイルショック、そしてバブル崩壊とリーマンショック・・・。安直なテレビドラマの中の話ではなく、リアルな「経営実践」の世界でこれらを乗り越えて来た企業が100年企業なのです。その中で繰り広げられた葛藤や挑戦と同時に達成と充実に思いを巡らす時、経営における時間軸について考えさせられます。

昨今は、情報インフラの発展と成熟により、個人や社会の価値観が多様化しています。その結果、どの分野においても、性別・年代別・地域別やライフスタイルの違いにより、多くの商品やサービスが蔓延しています。そして、その価値観の多様化は単なる商品やサービスという物質的なものにとどまらず、個人の意識や組織の中の仕組にまで深く根を下ろしています。そのひとつが「キャリア採用」の多用化です。

人材育成の放棄?

日常や仕事の世界で、様々なことが便利になりました。コンピュータを始めとする情報機器の発達、素材技術の発達、交通インフラの充実など、以前からは想像もできないような技術発達により、すべての分野の速度が上がりました。遺伝子やバイオ技術の進展により、農産物や健康・生命の世界まで大変化が起こっています。  その中で、きわめてあたり前のことですが「人間」だけがインスタント化出来ないのです。現在の社会や組織における悩みはこの部分に集中しています。

もともと人間は3年を基準にして成長します。小学校が低学年と高学年にわかれた6年間であることと中学が3年間、高校が3年間であることには理由があるのです。大学ですら3年間の教養と専門の課程を経て1年をかけて卒論を仕上げます。つまり、人間が成長するサイクルの単位は3年間です。ところが、最近の社会や組織や個人はその3年間が我慢できないのです。
3年を待たずに離職する若者が少なくないことと企業が安易なキャリア採用に走っている姿は無縁ではありません。組織にも個人にも3年をひとつの成長のサイクルとするという概念が失われているのです。売上は大事です。利益も大事です。しかしその利益をどこに向けて投資するのかという企業としての理念はもっと重要なものかもしれません。

10年以上お付き合いのある企業様では、当時頼りなかった若者たちが中堅を担い、当時の中堅は若手幹部として組織を支え、当時の幹部たちは後継人材育成に余念がありません。おそらくこうした組織が100年を目指してこれからも続いていく時代変化の荒波を乗り越えていくのだろうと考えます。逆に言えば、自前の人材育成を忘れた組織には明日はないのかもしれません。

若者が3年をサイクルに自分のスキルを考え、組織が3年をめどに組織の人材計画を組み立て、その実践活動の中で利益を追いかける姿勢が必要です。 経営の時間軸をどのように考えるかは、経営者の意識と覚悟です。今を凌ぐ強さと100年を目指すしなやかさが求められています。100年を意識した時に、時代の混乱や不透明さを切り開く知恵が出てくるのではないでしょうか。

プロパーの人材、育ってますか?