とじき雑感

南風通信再録 ふたつの「興味」

    こんにちは。戸敷進一です。
    個人的に「怒涛の11月」と名付けたのは、出張が多かったからです。滋賀や四国各県や九州じゅうをひと月駆け回っていました。その怒涛はまだ終わったわけではなく、月末には、もう一度四国に行きます。遠因は、3.11にあって、4,5,6月に「講演」の仕事がほとんどなかったのです。キャンセルが相次ぎ、他の業種の方々と同じようにエアポケットに落ち込んだような状態でした。ポツポツと仕事が入るようになったのは9月からで、3月以降の「反動」が一気に11月に押し寄せたのだと思います。九州の片田舎でも、こうした「時代の影響」から逃れることはできないようです。

    出張が多いので、当然旅先でホテルや旅館に泊まります。最近では随分件数は減りましたが、一番飛び回っていたころは「年間150泊」などという年もありました。そうなると、当然自分の中に「ベスト3」とか「ワースト3」などという宿泊施設に関するランキンが出来上がります。もちろん、厳密なチェック項目があるわけではなく、多分に自分自身の「感覚」での話です。

    良いホテル、感じの良い宿泊施設は、「価格」ではありません。値段が高いから良い、ということはあまり関係はありません。「立地条件」が良い、ということも同じく大きな問題ではなさそうです。一番大きな違いは、その施設に勤める人々の「興味」の問題なのかと感じます。
    良いホテルは、お客に「興味」を持っています。家族客なのか、ビジネスマンの客なのか、高齢なのか、若者なのかで、微妙に対応が変わります。スタンダーな対応マニュアルはあるはずなのですが、その上にもう一つのその場所や時に応じた「サービス」が用意されていたりします。新聞の手配やタクシーの利用などこちらが質問しなくてもあらかじめ察したようにコミュニケーションを交わします。感じの悪いホテルは、総じて客に対して無関心です。本人達にその気はなくても、「泊めてやっている」という気配があります。よって、対応が紋切り型で、印象に残らない。残らないだけではなく、嫌な感じがする場合もあります。そしてそれらは、フロントの対応だけではなく、駐車場の誘導員の対応や、掃除の担当の人たちの対応と正比例しているようです。

    その中で、客として「感動」に近い瞬間を覚えるのは、その組織のスタッフが客だけではなく、組織の「目的」にも「興味」を持っていることです。つまり、その宿泊施設全体に「進むべき方向」と「行うべき行動」が個人の中で確立されているからです。つまり隅から隅まで行き届いている、と客に感じさせ続けていることです。

    客に「興味」を持つのはそんなに難しいことではないかもしれません。客は瞬間であり、その時のことだからです。しかし、「組織の目的」に「興味」を持ち続けられる人間を育てるにはその背後で、真剣な教育訓練が行われているのだろうと思います。

    組織の「密度」が濃いな、と感じさせる企業があります、その組織の人々は、取引先や客だけではなく、組織の今と将来への「目的」にまで「興味」を持っています。だから、挨拶だけではなく、笑顔も、対応もアフターフォローも密度が濃い。そうして、客は再びそこを選び、訪れ、関係が続いていくのではないか。

    大きなホテルに泊まりました。地元でも有名なホテルです。綺麗な施設で、人の数も多い。しかし、最初から微妙な違和感がある。夕食の時も朝食の時も、チェックアウトするときも、タクシーを呼んでもらう時もずっと違和感がありました。タクシーに乗って、運転手の人のほうが親しみが持てたのは、どうしたことでしょう・・・。

    今週もお元気で。
    戸敷進一でした。

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