組織活性化コラム

2年前の冬の文章 〜藤本義一 逝く〜

    このところ、往年の俳優や作家たちの訃報が相次ぎます。基本的に「冬場」に年寄りは死ぬので、この冬もまだまだ懐かしい名前を見たり聞いたりするのでしょう。

    自宅の本棚の片隅に、「藤本義一」の本が並んでいます。直木賞を受賞した「鬼の詩」や涙なしでは読めなかった「生きいそぎの記」があるはずです。「男の顔は領収書」という軽めのエッセイもあるはずなのですが、若いころそのエッセイを読んで「大人」とはこんな感じ方をするものだとひどく感心した覚えがあります。結構影響を受けた作家でもありました。その藤本義一も逝ってしまいました。司馬遼太郎が逝き、半村良、光瀬龍、色川武大、城山三郎などという名人たちが次々に世を去っていきます。

    2年前に「ブログ」にこんな文章を書いていました。

     

    ありがたいことに両親が「昭和ひとけた」世代なので、その世代は【父母の世代】ということになります。
    自然と「昭和20年」(1945年)の敗戦の「風景」を両親の歳に置き換えて考えることが出来る。父は18歳、母は14歳でした。同時に「戦後復興」や「高度成長時代」も子供ながら親の背中を眺めながら感じていたように思います。
    「作家」たちも、「昭和ひとけた」世代は多士済々で、

    昭和2年  石牟礼道子  堤清二 北杜夫 城山三郎  藤沢周平 結城昌治
    昭和3年 光瀬龍 澁澤龍彦
    昭和4年 色川武大(阿佐田哲也) 向田邦子、
    昭和5年  梶山季之 石川喬司  野坂昭如 笹沢佐保 開高健
    昭和6年   小松左京 高橋和巳  白石一郎 谷川俊太郎 三好徹
    昭和7年  高橋たか子 本多勝一 小田実  勝目梓 石原慎太郎 五木寛之 小林信彦
    昭和8年 森村誠一   藤本義一 荒巻義雄 渡辺淳一 半村良 生島治郎
    昭和9年 池田満寿夫 灰谷健次郎

    と、思いつくままに書いてもある時代の「風景」を担った名前がずらりと並ぶ。当然、これに、一世を風靡した「映画監督」や「作曲家」「俳優」「漫画家」が名を連ねているわけで、当然、戦後の「なにもの」かを切り開いたパイオニア達でもあります。
    その世代の作家達の多くは、「映画界」や「ラジオ界」が斜陽となり「テレビ界」が勃興を始めるプロセスをある種のペーソスを込めてさまざまな場所で書いていました。「昭和ひとけた」の人々はその「枠組み」の変化を「政治」や「文化」を通して一番身近に感じていた世代でもあります。
    個人的な感想ですが、その「枠組み」の変化を哀しみを込めてユーモラスにエッセイの中で書き綴った脚本家の「倉本聰」は、昭和10年(1935年)1月1日の生まれで、私の中では「昭和ひとけた」です。(中略)

    PS:ブログをアップして、「作家」の一覧を読み返しながら、誰か肝心な人物を忘れているような気がして、頭をひねっていたら、孤高の作家・鬼才【大藪春彦】を入れ忘れていることに気付きました。慌てて、【大藪春彦】の生年を調べたら、彼は「昭和10年2月」の誕生でした。うーん、「倉本聰」と同じで、私の中では「昭和ひとけた」です!

     

    最近の若い子たちは「大藪春彦」の小説を読むのでしょうか。今の時代にこそ、あの「アナーキーな精神」は必要な気がします。
    古い本を読み返したくなっています。

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