とじき雑感

地政学の勧め

    物事を理解する時に重要な事は「時間軸」と「本質」です。
    人間や社会には時間軸があって、それは「今までのこと」と「今のこと」と「今からのこと」に別れます。今までを【従来】今を【現在】これからを【将来】と言います。その時間軸をしっかりと認識しておかなければ、本質的な課題や解決策は見えてきません。

    個人の人生においても、その3つの地点や時点を認識しなければ変化も呼び込めないし、飛躍などありません。今までという従来型の思考の延長線上が今の自分です。今の自分を今までの中に置きっぱなしにしていると今からの自分は今とあまり変わりません。その時にこれから先の自分という視点から今を眺めてみると「やるべきこと」が見えてきます。「しなければならないこと」「絶対にしてはならないこと」に気付きます。その時初めて、今までの自分の過去の経験が生きてきます。物事の本質はそういう細かな考察を見定めて体得するものです。

    世界覇権を手にする国家の条件は「海洋国家」であるということです。歴史的に見れば15世紀のスペインや18世紀以降のイギリスのことです。そして第2次世界大戦後の覇権国家はアメリカであることは皆知っています。軽佻浮薄な日本の政治家やマスコミはアメリカが核兵器保有国だから覇権国家だ、と認識していますが、とんでもない間違いです。アメリカが覇権国家である唯一の理由は、全世界に軍隊を派遣できる世界で唯一の海洋国家だからです。こんなことを言うとすぐに揚げ足を取るような事を言われるのですが、現代の日本はアメリカには絶対に逆らえません。なぜならば日本の国際貨物輸送量の海上輸送率は99.7%です。つまり輸入品のほとんどを海上輸送に頼っているのです。その国で何かのきっかけで輸送船が襲われるような事になれば、国家の機能は即時に停止します。同様の理由で、オーストラリア、ニュージーランド、インドネシア、フィリピンなども絶対にアメリカには逆らえないのです。これは思想や感情でものをいうのではなく、地政学上の制約から定められた地域や国家の条件なのです。
    「アメリカはそんなひどいことはしないだろう」というのは単なる憶測と感情の言葉です。現に70数年前に日本が世界に喧嘩を売った太平洋戦争は、その海上制海権の争いが原因でした。国家の動脈である海上を確保するために日本はアメリカに宣戦布告を行い戦争をしたのです。それもまた地政学上の制約から発生した事象です。

    ここに一枚の地図があります。ネット記事で見つけたものですが、これを見ると中国がなぜ南沙諸島に乗り出したいかの理由が分かります。

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    日本からではなく、中国から見た時の海洋地図です。海洋資源豊かな太平洋へ乗り出そうとする時に、中国側から見ると、フィリピン、台湾、南西諸島、日本がちょうどフタをするような形で中国の海洋進出を阻んでいます。どこかに突破口を開かなければ中国は海に出て行くことが出来ません。だから南沙諸島と沖縄にターゲットを絞り揺さぶりをかけてきているのです。これは良いことだ、悪いことだという道徳論の話ではありません。国家や権力が次の世界を切り開こうとする時に起こる当たり前の現象なのです。現に日本はロシアの圧迫を跳ね返すために日露戦争を起こし、朝鮮併合を行い、満州国を成立させ、南方進出を行いました。それらは「善悪」の基準から出たものではなく、地政学上の制約と国家と民族の時間軸から起こったものです。

    紙幅が足りませんが、本質を理解するための一助となればと思い地図を転載して見ました。個人も組織も、新しい視点から物事を考えて見ると、今までとは違うなにものかが見えてくるのではないでしょうか。
    (若者たちよ。ヘラヘラと遊びや楽な方へ逃げず、自分のために勉強しろ!)

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