とじき雑感

情報の「スタンス」を見極める

    テレビや新聞・雑誌から「情報」を得ようとする時、気をつけておかなければならないのは、その情報を伝える側の【スタンス】です。もちろんその情報 が正確であるか、事実であるかはあたり前のことですが、それ以前に伝える側が何を伝えたいのかをきちんと判断する能力を鍛えておかなければなりません。

    数年前、こんな文章をブログに書きました。

    金八先生がいない?
    「うちの学校には、【金八先生】のような熱心な先生がいない!」
    と叫ぶ中学生の映像を見たことがあります。報道番組だったのですが、教育現場の荒廃を伝える番組でした。
    【3年B組 金八先生】は、言わずと知れたTBSの有名なドラマです。
    その主人公である、【金八先生】のような先生がいない!と中学生が言うシーンを見て、しばし呆然とした。
    【金八先生】は、テレビのドラマである。
    「現実」ではない。
    それは、極めて当たり前のことで、【金八先生】がいないのは、当たり前のことなのです。
    にもかかわらず、中学生がそう叫ぶ。そして、そのおかしさを指摘することもなく、「放送局」が映像を立て流す・・・・。
    呆然としたのは、中学生の言葉ではなく、それを「いかにも」という感じで流した、放送局の「無節操さ」でした。そういう場合、その中学生をたしなめるか、番組でその間違いを指摘するのが【大人】の仕事です。ひょっとすると、放送局の人間も、本気で中学生と同じように思ったのか?もしそうだとすれば、何ものかが「狂っている」!!勘違いどころではない。認識の「前提」が狂っている。
    【金八先生】は、テレビのドラマである。
    「現実」ではない・・・・。

    夜9時からのNHKの「ニュースウォッチ9」を見ていて、呆然とした。
    東大寺(奈良市)の大仏の足元から明治時代に発見されていた剣2本が、1200年以上にわたり行方不明とされていた正倉院の宝物であることがわかった、というニュースの中で、突然 NHK大阪放送局が制作した古代史ドラマスペシャル「大仏開眼」のシーンが流れ始めた。吉備真備(きびのまきび)を主人公とした「大仏建立」の話なのですが、その中の映像が延々と流される・・・・。
    「おいおい、ニュースの中で、ドラマかよぅ・・・・」
    思わず、そう呟いてしまいました。ニュースの中で、ドラマの中の「天皇」や「皇后」がもっともらしく台詞を言う。
    世も末・・・・。

    昨日は、今回の「尖閣ビデオ」流出に関して、同じ「ニュースウォッチ9」の中で、以前NHKで放送された「外事警察」というドラマの映像が使われた。危機管理や外国情報機関との情報のやり取りに関する報道でしたが、それを説明するのに、「ドラマ映像」を使う・・・・?
    ニュース番組を作る人間の「センス」を疑わなくてはなりません。
    「うちの学校には、【金八先生】のような熱心な先生がいない!」
    と叫んだ中学生と、レベルが同じではないか。

    どんな時代を生きているのかは、自分で考えなければ、誰も教えてくれない。
    気を抜いていると、こんな「狂った」映像に騙されることになる。
    昨今の「報道もどき」の手口は、巧妙です。

    あっ、【金八先生】の放送は、1979年、今から30年ほど前のことだ。その頃、13歳だった連中は、今、43歳・・・・。ひょっとして、その時のまま、成長が止まっているのか?
    まさかねぇ・・・・。

     

    そして、今年。正月の「産経新聞」にこんな記事を見つけて、呆然としてしまいました。

    安倍首相は「ルフィ」を見習え!映画も大ヒット、漫画ワンピースが示す日本の進路

    産経新聞 1月2日(水)14時38分配信

    (前略)
    「漫画なんか引き合いに出してアホか」という方もおられるでしょうが、そう考えるみなさんは、1990年代はじめのバブル崩壊以降、2年以上在任した首相はたった2人だけで、2006年以降、首相がほぼ毎年変わるという世界からみれば“漫画以下”の国がいまの日本だということを良く理解しておいた方がいいでしょう。安倍晋三首相にはぜひルフィのような侠気(おとこぎ)あるリーダーになっていただきものです。

    「ルフィ」とは、1997年以来国内で3億冊以上売れた「ONE PIECE(ワンピース)」という漫画の主人公のことです。記事の前段では、その漫画がいかに売れているか、劇場版のアニメがどれだけヒットしたか、その背景にはどんなものがあるのかを事細かに書き記しています。そして、記事の末尾が、「安倍晋三首相にはぜひルフィのような侠気(おとこぎ)あるリーダーになっていただきものです」というものでした。

    この記事を書いた記者は1988年の入社だそうです。22歳で入社したとすれば、現在47歳。あらら、金八世代??なるほど、だから、こんな「現実逃避した文章」を臆面もなく書けるのだな。
    産経新聞は、司馬遼太郎や近藤紘一などという優れたジャーナリストを輩出した新聞社なのだが、「漫画を見習え!」というリアリズムが完全に欠如した記者を生み出すほどに「疲弊」してしまったようです。

    日々、流れてくる情報をどのように捉えるかは、いわば個人の問題です。どんな時代を生きているのか、どんなふうに生きるのかという理解なしに、他人の言葉に「盲従」してはいけません。
    自戒を込めて。

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