とじき雑感

「無防備」な人々

    一昨年前から、自転車に乗るようになりました。いわゆる「年寄りの冷や水」というやつで、随分周りの「嘲り(あざけり)」を受けながらも、地道にトレーニングを続け、夏場に福岡市で行われた「50Kmロードレース」にも参加し、なんとか制限時間内で走れるくらいにはなりました。少々誇らしい気分でいたのですが、その秋に練習中に横転し、右膝を強打。その後遺症でせっかく実現しかけた「ダイエット」はすぐに「リバウンド」、あっという間に元の木阿弥となりました。それでも通勤や休日には今でも乗っています。

    基本的に自転車は「車両」です。よって、車道を走らなければなりません。当然車道を走るのですが、博多は都会なのでどうしても走れない車道もあります。特に「博多駅」近辺は南北にガードがあって、車道が狭い上に車両が集中します。そこを自転車で通るのは「危険」極まりない。おまけに、福岡の西鉄は日本最大のバス保有会社(1899台所有)なので、自転車の車道走行はなかなか厳しい・・・。
    で、「歩道走行」することもあります。

    「歩道走行」で最も辛いのは、「携帯電話を眺めながら歩く人々」です。年寄りなので、若い人達のように人並みを縫うような走りは出来ません。とにかく歩行者の迷惑にならないように注意深く走行します。危険があれば、素直に足をついて、時には押して歩道を移動します。それでも困るのは「携帯電話を眺めながら歩く人々」です。何しろ、携帯電話に集中しているのでどうやら全く周りの風景が全く見えていない。よって、向かい側から来る人も自転車も全く気にしない。最近では、携帯にイヤホーンを差し込んでいるので、「音情報」まで遮断して歩いている。実に「無防備」な人々が少なくありません。
    そうした「無防備」状態にあるのは、何も若者だけではありません。「無防備おばさん」「無防備おじさん」も大量発生中です。
    「無防備人間」は、何も歩道を歩いているだけではありません。ほぼ毎日のように通る「博多駅コンコース」も「無防備人間」の群れで溢れかえっています。入り口でのろのろと歩く人々の多くが「携帯電話」を眺めています。飛行機を降りた瞬間に「携帯電話」を眺めだし、人の流れを妨げる人々は少なくありません。電車に乗り込めば、半分近くの人たちが「携帯電話」をのぞき込んでいるという風景は、すでに都会では日常的なものです。

    随分気になって、東京に住んでいる【馬鹿息子】に電話をしました。
    「・・・という連中が増えているんだが、お前はそんな馬鹿なことはやってねぇだろうな!」
    「やってないよ」
    「本当だろうな?最近は緊張感のかけらもないような連中ばっかりだ。馬鹿面丸出しで、イヤホーンをつけで踊りながら歩いているガキもいる。何時の時代も緊張感を持って生活をしなければならないのに、場所をわきまえない連中が少なくない。ゴルゴ13を見てみろ。人と会うときは壁を背中にして、手を相手に預けるような握手はしない。これは生き方の問題だ!【無防備な人間】にだけはなるんじゃねぇぞ!」
    「あのね、おとうさん・・・」
    「何だ?」
    「あのね、外国じゃそんなボケた連中はいないよ。街に危険がいっぱいだからね、みんな張り詰めて街を歩き、生活をしているよ。いいか悪いかは別にして、そんなことをしているのは日本人くらいだよ。平和な国だからできることだけれど、僕はしないよ」
    19歳でロシア留学をした【馬鹿息子】は、ロシアや東欧の国々をよく知っているので強い口調でそう言い返す。
    「外国でそんなことをすれば、すぐに襲われるよ」
    「そうか、そうか、分かってりゃいいんだ、わかってりゃ・・・」
    「おとうさんこそ、新幹線で【無防備】に眠り込んだりしていないよね?」
    「ん、ん、いやぁ、おれも大丈夫だ(汗)…」

    さて、「社会の風景」は世相を映す【鏡】です。携帯電話ばかり眺めていると「世相」を見失います。
    「無防備な経営者」「無防備な幹部」「無防備な社員」いませんかねぇ・・・。

    (自戒を込めて!)

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