【今週の言葉】・・・ 思考の「補助線」

長くコラムを休んでいたので、とじきは遊んでいるのではないか、という悪い評判を聞きました。つまり「発信」をしていないので、本来の【仕事】をしていないというのです。古いお付き合いのある社長からはわざわざメールまで頂いて注意された。
いろいろ事情はあるのですが「本来の仕事」と言われると、さすがに痛い。数年前まで「4年9ヶ月」に渡って一日も欠かさずブログを更新していた頃を知る方々からの「矢」は、当たるとかなり痛い。
まったく「発信」していないわけではなく、隔週の「メルマガ南風通信」と毎週発行の「とじきレポート」と帝国データバンクの情報誌への月1回の原稿など自分なりには頑張っているつもりなのですが、古い友人や古いお付き合いのある方々は許してくれない・・・。

その間どんなことを「発信」していたか、ご紹介。

 

こんにちは。戸敷進一です。
あまり体調のことを書くと、大いに心配していただく方々がいて心苦しいのですが「腰痛」が宿痾にありつつあります。特に新幹線の座席が良くないようで、名古屋や大阪から博多に帰るとき、仕事終わりなので油断して座席で居眠りをしてしまいます。変な格好で眠り博多駅につくと、まずまともに歩けない。すさまじい「腰痛」で足をおずおずと運び、階段で悲鳴を上げます。博多駅近くのマンションまで普通に歩けば5分位なのに、倍以上かかってしまいます。  先日も四国から岡山を経由して博多駅に到着しておずおずと帰りながら、ふとショーウインドウに映る自分の姿を見たら「おじいちゃん」でした(泣)横浜には、私と同じ歳でエベレスト登頂を目指して日々トレーニングを続けている尊敬する税理士の先生がいるというのに、なんという情けなさ(大泣!)

さて、標題です。
普段あまりテレビを見ません。食事の時間とニュースの時間が重なった時くらいは見ますが、それ以外は見ないことにしています。理由はいくつかありますが、偏った内容や「嘘」の多さに驚くことが少なくないからです。まだラジオの方が、速報性やリアルという意味では信用が置けるかもしれません。

先日、宮崎の実家でたまたま流れていた番組を見てため息を付いてしまいました。なんでも「フィンランド」の福祉政策が素晴らしく、特に子育て支援が優れているという内容でした。スタジオに居る人たちも口々に賞賛の言葉を発していました。 「日本もそうした仕組みを取り入れるべきだ!」  しかしながら思わず「うーん」と唸ってしまったのは、フィンランドの人口を知ってるからです。フィンランドの人口は約530万人、人口密度は16人/Km2です。人口1億2700万人、人口密度337人/Km2の日本と比較することのおかしさを知っているからです。  人口530万人とは、日本で言えば兵庫県(約550万人)福岡県(約510万人)くらいの人口です。つまり地方規模の「話」なのです。それでもそれを目指せというのななら「従業員50人」の組織やっていることを規模として24倍の「従業員1200人」の組織に真似をしろと言っているのと同じです。規模が違えば仕組みが違うのは当たり前のことです。おまけにフィンランドは消費税が23%(食品でも12%)です。教育や福祉が充実しているようにみえるのはそれが背景にあることなのですが、日本でそれをやったらどうなるかという「想像力」はないのです。
ただひたすらに「素晴らしいから真似をしろ!」というお気楽さに呆然としてしまいます。  おまけにフィンランドは徴兵制を敷いている国です。国内に200万丁の銃登録があり、国内の世帯の25%はライフルを所持していて予備役はそれを使って銃訓練をします。これは国家予算を軽減するための措置です。 「フィンランドの高度福祉制度を実現するために、日本も消費税を23%にして、徴兵制を敷いて、各自銃を保持して日頃から射撃訓練をするようにすましょう」 という話は誰もしません。時折、左ががかった「空想政治家」が真顔でフィンランドのことを引き合いに出しますが、そのおかしさには注意を払っておく必要があります。

ある日、若い人と話をしていたら、先日の「イスラム国」の日本人処刑について様々なことを聞かせてくれました。どうやら「ネット」から仕入れた知識のようで、ヨルダンの不手際や他の国々の悪口を言い募ります。笑って聞いていましたが、歳を食った変なおじさんは、思わず意地悪な質問をしてしまいました。
「ヨルダンの人口を知っているかい?トルコの人口を知ってるかい?」  若い人が口をつぐんだので教えてあげました。 「ヨルダンの人口は約630万人、人口密度は66人/Km2だ。人口規模は日本で言えば、千葉県(約610万人)くらいの国だ。そこがよく頑張ったなと私は思うがどうだい?ちなみにトルコの人口は7500万人くらいだ。フランスの6100万人より大きい国なのでイスラム国も安易には攻め込めないんだが、そのことを知ってるかい?ちなみにドイツの人口は8100万人くらいかな、ヨーロッパでは一番大きな国だから、大きな顔をしているんだよ」 「何かを語るとき、現れている現象や誰かの話で自分の意見を決めては駄目だ。物事を考えるときには【補助線】すなわち他の要素も合わせて仕入れておかないと、理解が変な方向に向かっちゃうよ。【補助線】とは数学の図形問題をとく時に、自分で何本か解答を導き出すために入れる線のことだ。本筋ではないけれど、解答や理解への手助けをするものだが、自分で書き入れるということが大切だ。ネット記事を鵜呑みにするより、誰も見ていないところで【補助線】を入れてみると少しは風景が変わるかもしれないね」
歳を食った変なおじさんは、そんなことを若い人に言いました。

別のある日、安倍政権の進める「アベノミクス」がいかに間違っているかということを口汚く罵り続ける人と会いました。何やら「円安」になったので日本のGDP順位が二十何位まで下がって大変か事になった。こんなことをさせ続けてはいけないので、安倍は潰さなきゃイカン!と下品な言葉で言い募ります。知らん顔をしていたのですが、その人が私を名指しして意見を求めたので、思わず言ってしまいました。
「アベノミクスが成功かどうかは知らん。しかし、GDPの国際順位が下がったことがそれほど大変なことかぁ?日本のGDPの85%は国内需要じゃ。国際順位がどうあろうと国内の影響は小さい。国際順位が下がって、飯が食えなくなったか?部屋追い出されたか?路頭に迷ったか?ネットや新聞のヨタ記事に踊らされてるんっじゃねぇよ。大体円高・円安の意味がわかってるのか?1980年代の円相場は240円/ドル位だった。それで国が潰れたか?2012年の円高は75円/ドル前後だった。それで国がおかしくなったか?自分の頭で考えろよ。誰かに踊らされて口汚く人を煽るんじゃねぇ!」
相手が「下品」だったので、思わず「下品」に答えてしまいました。

思考の【補助線】、大事です。特に若い人は、自分で何本か【補助線】を入れてください。自分の未来や自分たちの未来は、自分の手で切り開かなくてはなりません。

今週もお元気で。戸敷進一でした。