とじき雑感

南風通信再録 組織課題としての「35歳」

    こんにちは。戸敷進一です。
    いよいよ2011年も残すところ「3週間」!メルマガもあと2回を書くと、今年は終わりです。気持ちばかりが焦る年末です。
    毎年、今頃になるとさまざまな「統計」を眺めながら電卓を叩くことが多いのですが、今も「3週間」という数字を書き込んだあと、「3×7×24」と計算して「504」という電卓に浮かんだ数字を見て頭を抱えてしまいました。今年の残り時間は「504時間」なんです!3週間と表現するとなんとなく余裕がありそうですが、「504時間」などと言われるとドキリ、としませんか。今年の始末だけではなく、来年の計画まで考えると、ムンクの「叫び」のような格好をしたくなります。

    「1996年」という年は、近代社会史重要な年だったのではないかと考えています。その前の年に「Windows95」というOSが発表され、PCが一挙に普及した年でした。同時に「携帯電話」が年間100万台
    以上売れ、その後の「携帯ブーム」のさきがけとなった年でもあります。IT時代のまさに幕開けの年でした。
    そして、その年に生まれた子供は、現在15歳で高校一年生です。その頃10歳だった子供は、現在25歳になっています。当時20歳前後で社会人としてのスタートを切った若者達は、現
    在35歳です。当時39歳だった私は、その頃の「変化」を良く覚えています。田舎の企業の幹部だったのですが、それまでの「Dos-v」仕様のソフトが新しいOSに対応し始め、各社の社長や幹部たちが携帯電話を持ち始めたプロセスをしっかりと見ていました。

    さて、組織にはさまざまな課題がありますが、最近組織と関わりながら、多くの組織で感じるのは「35歳の溝」です。組織のトップや幹部達の年齢を「50~60歳」くらいと考えたとき、その世代の人々は「以前の仕組み」や「プロセス」を十分に知っています。そうした重厚な「経験」があればこそ、経営上の判断や組織の進むべき方向を過らずに行えるのだと思います。しかしながら、人間は「思い込みの生き物」なので、意外と「変化」に気付かないものです。

    「なまじ変化のプロセスや以前の仕組みを知っているために、組織の現在の変化や社会の動きに気付いていないのではないか」という感覚が最近強くあります。

    例えば、鹿児島県にはさまざまな事情で長く「セブンイレブン」がなかったのですが、本年3月に1号店が出店して、現在22店舗が鹿児島にはあります。2013年までに200店舗を展開する予定、という情報を受けて、私達の世代は「大きな変化」を感じます。しかし、若い世代は驚きません。むしろ、驚いているわれわれ世代を不思議な表情をして眺めています。彼らにしてみれば「セブンイレブン」が今までなかったことの方がおかしいのであって、いまさら何を言っているのだ、と内心考えています。同じように、沖縄に外食産業の「ワタミ」が年末に出店して、来年には沖縄で7店舗を展開する予定だ、という情報に私は驚
    くのですが、若い世代はまったく反応しません。若い世代にとっては当たり前の話で、沖縄が抱えている「特殊事情」など以前に「ワタミ」がないことの方が不思議なのです。

    実は、こうした「組織内の誤解」以前に、「感覚のずれ」が発生している現場を今年は数多く見てきました。その境目がどうやら「35歳」あたりにありそうな気がしています。この組織内の「感覚のずれ」が、社会との「意識のずれ」に繋がっているのではないか。
    「組織内のコミュニケーションをもっと深めて!」
    というスローガンをよく耳にしますが、単なる「親睦」などでは分かり合えない「深い溝」が目の前に広がっていることを知るべきです。

    サムソンの平均年齢は32.8歳、ソニーの平均年齢は40.3歳です。2012年の課題は「頑固親父」と「スマート世代」の融和にありそうな気がしています。

    今年も残すところ3週間です。
    寒さも厳しくなります。ご自愛ください。
    戸敷進一でした。

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