組織活性化コラム

5年前、5年の後・・・

    朝、オフィスに顔を出すと、昨日の夕方に届いた郵便物をスタッフが持ってきてくれた。随分頑丈な封筒に入っている文書で、開封すると、上質な紙に「役員改選」の挨拶文が書かれていました。
    10月1日付け、で新役員体制がスタートすることは知っていたのですが、こうして「きちん」と「形」にして案内されると、こちらの方も何やら居住まいを正さなければならないような気分にさせられました。

    5年前、名古屋での「三協立山アルミ」さんの講演会で縁を頂き、以来その時々の組織課題でお手伝いをさせていただいています。組織活性化活動だけではなく、HPやマーケティングサポートまでさせていただいているので、組織の個人の顔までしっかりと見えている関係です。

     

    新執行部の顔ぶれを見ると、5年前には想像もつかなかったような人たちの名前が並んでいます。3社のグループ会社の会長職を引き受けられたY会長は、当初随分とご苦労をされました。自前の「人材」を持っていないために、思い切った手が打てず、歯ぎしりをしたくなる瞬間も少なくなかったかと思います。創業者の影響を強く受けた役員や幹部たちの中で、独自の路線を切り開いていくのは容易なことではなく、粘り強い「孤独な戦い」が続きました。
    新体制の中には、当時社長だった2人の名前が見えません。以前からいる社長は一人だけです。新専務、新常務、新役員たちはすべて30代、40代になりました。そして彼らは「5S活動」のリーダーやメンバーであった人たちです。

    企業組織の中の【幹部】は「業務」の中からは育ちません。どんなに営業を極めてその組織の中でNo1営業マンになったからといって「幹部」が務まるわけではありません。同じように、大学を出て、工場内のことをすべて掌握して工場長だからといって、「幹部」と呼べるわけではありません。おまけに「営業手法」や「製造革新」が大きく変化してきているので、時には過去の体験が邪魔をするのですが、そうした人が「営業部長」「工場長」として幹部会に出席しているので、組織の発展が止まってしまう。
    発展が止まるだけではなく、時代とともに進もうとする若者たち足を引っ張る。邪魔をする。追い詰める。辞めさせる・・・。

    多くの組織で人が育たない理由は明白です。「業務」で人を育てようとしているからです。「業務」では人は育ちません。「全社的プロジェクト」からしか【人材(財)】は生まれてこないのです。
    「業務」で「上司」を説得する瞬間などありえません。「業務」で若手が全社に向けた教育訓練を行うなどというシーンも想像しづらいものです。ましてや、若手が専務に向かって直接何事かを依頼することなど「業務」ではないのです。しかしながら「全社的プロジェクト」ではそうしたことを行わなければ物事は進みません。【全社】を相手に、全身全霊を込めて行動しなければ「全社的プロジェクト」は完成しません。

    新役員の名前をみてみると「初代5Sリーダー」や「メンバー」の名前が並んでいます。「2代目リーダー」の名前もありました。彼らはその役割を与えられていた期間、本気になって組織と向い合ってきたのでした。そうした経験が彼らを育て、新しいポジションにつかせたと言っていいでしょう。
    私の中には、このあとに続くであろう「若い世代」の名前と顔が浮かんでいます。

    「5年後にはこの役員たちの中に女性の名前が必要ですよ!」

    会長と、新専務、新常務に電話をしてそう伝えたところです。何しろ、40数名の営業マンすべてが「iPad」を持って駆けまわる「建材販売グループ」です。時代の最先端を走っているのだから、それくらいは当然視野に入っているんですけど・・・。

    その組織の「5年前」を知っているので、とじきは「5年後」を想像する。
    さて、とりあえずの私の仕事が見えてきた。「5年前」のその組織の写真を引っ張り出し、新しい人たちにそれを見せて、「新役員」たちがこれまで臨んできた【全社的戦い】を語ってあげなければなりません。
    「前オーナーとの戦い」「旧役員との戦い」「業界常識との戦い」「組織の中の旧システムとの戦い」「古い意識との戦い」何よりも何よりも「変わりたくない自分との戦い」を勝ち抜いてきた新しい役員たちの「足跡」を語ってあげなければなりません。

    素敵な案内状を頂きました。

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