組織活性化コラム

南風通信再録 〜組織の「重心」〜

    こんにちは。戸敷進一です。
    「秋深き 隣は何を する人ぞ」
    とは、俳聖・松尾芭蕉の最後の句です。最後の旅で読んだ
    「旅に病んで 夢は枯野を 駆け巡る」
    という句の印象から、秋になるたびに芭蕉を思い浮かべてしまいます。いよいよ、「秋深い」季節です。

    重心とは、力学において、空間的広がりをもって質量が分布するような系において、その質量に対して他の物体から働く万有引力の合力の作用点のことです。
    例えば、「人口重心」などという考え方があります。全国に散らばっている日本人の「中心点」を計算によって求めるという考えですが、現在の似ほんの「人口重心」は、岐阜県関市北部(北緯35度36分20.65秒、東経137度00分27.43秒)になるそうです。(総務省統計局データより)

    この位置は、観測以来「東へ」「東へ」移動していて、人口の東京一局集中を証明していました。もっとも、3.11以来「人口の重心移動」が起こっているので、次のデータ発表時にどれだけの移動がどの方向へ向かっていくのかは興味深いところです。

    さて、「組織」を外側から眺めている職業に従事しているので、クライアント先の「組織の重心」については重大な関心を持っています。

    ワンマン経営者がいる場合は、当然「重心が高く」、安定感を欠きます。トップが少し動くたびに、組織がそれを支えるために「右往左往」して、端から見ていて「ハラハラ」する。「創業時」や大幅な「方向転換」の際には、このバランスが重要ですが、日常では少々つらいものがあります。
    逆に、組織の「下の部分」に「重心」が偏っている場合、レスポンスはよくありません。なにしろ、「重心」が低いので、組織自体が重く、動きが鈍い。新しいことを始めるときに、こうした組織は素早く動けません。
    では、中間に「重心」があればいいかというと、これもまた一概に言えません。その「重心」を担う人々の性格によって、「重心」が安定せず、ある時は「敏感」に、ある時は「鈍感」に反応し、そのばらつきが組織の動きに制約をかけてしまうこともあります。

    一度、自社の「組織図」を思い受けべていただきたい。
    さて、「重心」はどのあたりにあるのでしょうか。

    実は、組織の「重心」は、フレキシブルで有るべきものです。テーマによって、その【位置】が動くのがノーマルな状態です。「方針」や「計画」は、トップが決めるものです。その「方針」や「計画」を中間層(幹部)が正確に理解・納得して、下部へ伝える。下部は、その「方針」「計画」に関して、ブレることなく取り組んでいゆく。時代変化が大きく、なおかつ先行きが不透明な時代に、「重心」の位置にこだわることは、あまり意味がありません。ほんとうの意味での「役割」を理解し、理解させてこそ、「現代組織」です。

    今一度、自社の「組織図」を思い浮かべ、「テーマ」による【役割】を認識し直す時期かもしれません。組織活性化の第一歩は、この「重心」の位置と機能の検証から始まります。

    季節の変わり目です。体調管理にはお気をつけ下さい。今週もお元気で。戸敷進一でした。

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