20年近くコンサルタントとして企業に関わり、最近になって分かってきたことがあります。多くの組織の役員級の経営幹部を眺めた時、3種類の道筋があります。
- 経営者一族なので役員をしている
- 経営者が引き上げて役員とした
- 自力でポジションを勝ち取った役員
- の場合は、最初から役割りとして定められているケースが多いので、あ
る意味仕方ありません。本人に資質があれば問題はありませんが、無理やり役員に立たせられると相当苦労する場合があります。②の場合は、多少なりとも経営陣が資質を見込んでその任に就かせるわけですから、適材と言えるかもしれませんが、その役に就かせるまで長い年月がかかります。③は資質も能力もある人達なので、大きな心配はありません。その人達は別の組織にいても必ず頭角を現します・しかし、今までの経験からすれば極めてまれなケースで、5%くらいしか該当しないのではないかと思っています。
若手育成の落し穴
中小企業において、若い世代が成長しないのは「組織の将来」がよく見えて
いないことが原因です。経営計画書で目的や目標を掲げながら、組織の具体的な姿を全員がイメージできていないのです。まず明確な「後継者」のイメージがなく、同時にその時の「役員(専務・常務)」の姿が思い浮かばないので、組織の将来像が平面的で立体的ではないのです。従って、多くの組織で若手の定着が悪く、少し仕事を覚えると会社を去ってしまう。
経営陣も幹部もそのことに気づいていないので、若手が全くと言っていいほど「成長する」ことに対して興味を持たなくなっています。本来、可能性の塊であるはずの若手に「未来の可能性」を早くから教え、それを伸ばすというアプローチをすれば、企業の可能性も格段に上がります。若手社員に、後継者や現在の経営者と同じ経営感覚を持たせることにより、間違いなく組織の活性化を図る事ができます。
自分の言葉で話せる人間。組織の全体像を理解できる人間。組織人としてた
くましい人間。当事者意識を持った人間。人材育成に関してリーダーシップが取れる人間。組織に忠誠を誓う人間。外に出しても恥ずかしくない人間。・・・
こんな若手は待っていてもめったに現れてくるものではありません。まさに組織が手塩にかけて育て上げるべき存在です。
減少する労働力人口
2000年に6800万人近くいた労働力人口(15歳〜64歳)は現在6500万人まで減少しました。厚生労働省の予測では2030年には6000万人を切りそうです。大量に新卒者を採用できる時代は終わり、中途採用者も売り手市場です。現有勢力でどこまで戦えるか、そしてチャンスが有ればためらうことなく採用を重ね、新しい人材確保に努めなければなりません。そのためにはいち早く組織の将来像を定め、未来の「役員候補」を鍛え上げる必要があります。
現在20歳の若者は今後45年間どこかで働かなくてはなりません。30歳の中堅は35年間、40歳のベテラン社員ですら25年間どこかで働かなければなりません。そのどこかがどこなのかが問題です。現在30歳の後継者が、10年後に40歳で組織を継承したとして、その右腕左腕となる人材は誰でしょうか。現在50歳の部長たちが60歳で右腕になるのでしょうか。経営の時間軸の中で、若い世代はそこを見ているのです。どんなに立派な経営計画を立てても、それに自分たちの未来が立体的に組み込まれていなければ、本気にはなれません。
未来の役員育成が急務です。