とじき雑感

南風通信再録 ~風に逆らう時代~

    こんにちは。戸敷進一です。
    歳をとってしまったようで、なかなか口には出しづらい言葉ですが
    「時間がたつのが、やたら早い・・・・」
    つい先日、新年が来たと思ったら、5月の連休がやって来て、もうお盆。年寄りの感覚からすれば、次は年末です。年末か来ると、すぐに新年で
    ・・・・。何もかもが、すさまじいスピードで行き過ぎていくように感じるのは私だけでしょうか。

    おまけに、3.11以来の景気低迷や国際金融不安による急激な円高などの経営環境の激変も「加速」していて、気が休まる間もありません。日本経済新聞が行った「社長100人アンケート」によると、国内制度や経営環境が現状のままなら、「何らかの機能を海外に移転せざるを得なくなる」と答えた国内主要企業の社長(会長・頭取を含む)は39.3%(140社のうち、55社)にのぼった、といいます。
    なんと「4割」の企業が国内を出て行く、と考えているのです。単純に「内需を伸ばせ!」と叫ぶ経済評論家がいますが、工場や販売拠点の海外移動が進み、それによる失業者の発生や、同時に進む高齢化の中でどうやって「内需」を増やすのかを示さない言葉に信用性はありません。
    「地域」「業種」「事業規模」「業態」に応じた、組織的な変革なくして、新しい時代への対応は不可能です。何よりも、少子高齢化や政治の機能不全などが重なっているために「ビジネスモデル」がない時代に突入してしまっているのです。そのことに気づいていないと、「組織の存続」は危ういかもしれません。

    1・「右肩上がり」の終焉
    2・「従来型システム」の終焉
    3・「相互扶助」の終焉

    この3つの要素があらゆる局面で絡まりあっているために「ビジネスモデル」が構築できなくなりました。

    たとえば、全国で人口が増えているときは「消費」は増大しますから、先に増大している地域、すなわち東京に代表される都会で何が起こっているのかを誰よりも早く知り、地方にそれを移植してしまえば大きな間違いを犯すことはありませんでした。つまり、「都会」にモデルがあったので、
    一番大事なことは、頻繁に東京に出かけ、はやっている店や伸びている会社や生産システムを見学して、その「真似」をしておけば良かったのでした。生産、販売、調査などのシステムの「手本」を元に修正すれば良かったのです。
    そして、昔はある程度「政治」が有効に機能していたので、それに見合ったインフラの整備や法制度の確立、補助金制度という「方向性」を示してくれたので、それに沿って動いていれば良かった。企業や個人はこぞって「選挙運動」に参加し、より優位なポジションを獲得するために動いていれば風に乗れたのでした。
    そのために「商店会」や「○○協会」「△△組合」という相互扶助システムが存在していました。そこにある精神は「浮かぶときも一緒、落ちるとき
    も一緒」という牧歌的な【村社会】の精神でした。本来、農村的思考の強い国柄でしたから、何よりも「異端」を嫌う国民です。「村八分」などと
    いう世界史上例のない精神構造をもった国民なので、「協調」することが何よりの美徳とされ続けてきました。よって、抜け駆けをしない、という
    暗黙の了解で社会が動いていました。

    あまり考えなくても食える、というのが、戦後66年間の特徴であったかもしれません。しかしながら、昨今の「経営環境の激変」や「社会情勢の変
    化」はそうした穏やかな動きではありません。「グローバル化」を含んだ、同時に「少子化」を孕んだ構造的な動きです。そうした時代には、ゆっくりとした動きや甘い思考では太刀打ちできません。

    日本の人口は減少し続けている。政治は機能的な働きをしていない。その中で助け合う余裕はなくなりつつある、という現実と真摯に向き合わなければ、組織も個人も「主体的な」生き残りは難しいのではないか。長いものに巻かれてしまえば、そのまま一緒に海底深く引き吊り込まれてしまう。
    自分の身を守るのは、自分しかいない。所属する組織が壊れれば、個人が壊れかねない・・・・。
    なぜ、今、必死になって「組織」のことを考えなければならないのか・・・。

    中小企業の「手本」は、大企業にはありません。
    地域の「手本」は、都会にはありません。
    自分たちの組織の「手本」は、ビジネス書の中にはありません。

    「アンテナ」を高く掲げ、「受信機」の精度を上げ、自らの「道」を探す時代がやってきました。どんな生き方を選ぶか、それは「自由」です。そ
    して「自由」は、【風に逆らう】ことと同義です。
    自ら考え、自ら行動しない限り、誰も助けてくれない時代の幕開けです。

    2011年も、あと残り3分の1。約4ヶ月となりました。
    盆が明けると、すぐに年末。
    今週も、どうぞお元気で。
    戸敷進一でした。

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