とじき雑感

南風通信 再録 「価値」は共有できるけど

    今年のはじめに書いたメルマガの文章です。

    みなさま、新年明けましておめでとうございます。戸敷進一です。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

    毎年、年末から年初にかけて、様々なメディアで一年の「統計」が発表されます。この季節は、そうした統計や予測数字をメモするのが仕事です。世の中の変化は体感することも大切ですが、それ以前に「数字」として変化を抑えておかないと、変なところで勘違いをしてしまうことがあるのです。
    人口の自然減少数(出生数−死者数)も、2007年は年間1万8千人くらいだったのですが、いよいよ20万人の大台を超えました。かつて286万人もあった出生数は減りに減り103万人です。そのうち、赤ちゃんを見かけることが珍しい時代がやってきます。日本のGDPの7割は国内需要だと言われていますから、これから先の国内販売戦略は、幾重にも「変化要素」を組み込んだ精緻なものが要求されそうです。

    「価値は共有できるのだけれど、【価値観】を共有するのはむつかしい」
    そういう話をしてくれたのは、知人のF社長です。昨年の暮、食事をご一緒させて頂いた時の言葉です。
    「価値は客観的に表現できるので、教育訓練で共有することが出来るんです。数値に置き換えたり、具体的な行動の中で教えることが出来る。しかし、【価値観】は個人の上に乗っかているものだから、教育や訓練ではどうにもならんのです」
    確かに、物の価値や製造・販売などという業務行動の価値は、利益や顧客満足のフィードバックで具体性を持たせることが可能です。どれだけお客さんが喜んでくれているかなどは、組織内に開示しやすい事柄ですし、利益はより端的に価値を表現できます。よって、朝礼や会議などのコミュニケーションの場で意識的に繰り返すことにより「共有」の道筋を作ることができます。
    しかしながら【価値観】は、個々の経験や資質に関連するので、お座なりな言葉や伝達手段では、共有しづらいものです。例えば、60歳の経営トップと18歳の新入社員の関係は、いわば「祖父母と孫」の関係です。実際の日常で、実の祖父母と1時間以上真剣な話がなかなか出来ない風景を想像していただければ、その困難さが理解していただけるでしょうか。「祖父母の価値観」と「孫の価値観」をどのように共有させればいいのでしょうか。ひとクラス40数人という競争社会で育った世代と、ゆとり教育世代の間の溝は、なまなかなことでは埋まりません。
    「全社一丸」
    「目標共有」
    「一致団結」・・・
    などというスローガンで乗り越えられるほど、社会も組織も単純ではありません。

    「では【価値観】を共有するためにはどうしたらいいんでしょうか?」
    私が尋ねると、F社長は明快にこう言いました。
    仲間になる以外ないんですよ。おもしろさは、仲間以外に共有できないものなんです。教育訓練も大切ですし、コミュニケーションも重要です。でもその前に仲間になることのほうが組織活性化の本質ですよ。どうやって組織内に仲間を増やしていくか。これが社長の本当の仕事かもしれませんねぇ」

    1月の「とじき塾」では、「2013年をどう戦うか」というタイトルで、少々刺激的なお話をさせてもらいます。2013年は、組織の「密度」と「精度」を上げておかなければなかなか結果が出ないかもしれません。ぜひ、ご参加ください。

    寒さはこれから本格化します。皆様ご自愛下さいませ。
    今年もよろしくお願い致します。
    戸敷進一でした。

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