とじき雑感

再録【日本人の平均年齢】

    最近、研修の冒頭で【現実から目を背けない】というタイトルのパワーポイントを見ていただくことがあります。3.11の「東日本大震災」以来、「福島第一原発問題」が顕在化して以来、日本の風景は大きく変わり、なおかつ「将来」へ向けてのビジョンもかなりの修正を迫られています。どう考えても、評論家やコメンテーターが「率直な未来像」を語っているとは思えず、講演の中ではとてもここでは書けないような、かなり「きわどい」話題に触れてしまいます。

    「日本はかつて奇跡的な復興を遂げた国だ。今回の困難もこれから必ず克服できる。頑張ろう、日本!」

    まさにそうであることは疑わないが、その「方法」や「プロセス」は、かつてとは大きく異なります。そのことを語らず安易に「頑張ろう!」という掛け声に、うつろさを感じてしまいます。まるで日本から「リアリスト」が消えてしまったのかと思うほど、「安易」で「手軽」で「インスタント」な話ばかり飛び交います。

    かつて書いた文章を再録しておきたいと思います。

    【日本の「平均年齢」】

    日本の現在の「不景気」の理由をきちんと説明してくれる「アナリスト」は少ないようです。世界的な金融不安や日本政府のしっかりした経済対策が出j来ていないことなどを理由にしますが、本当の理由は「人口構成」のいびつさにあります。

    1947年(昭和22年)から約5年間に生まれた「子供」は、年間200万人を越えています。
    いわゆる「団塊の世代」と呼ばれる人々です。実は、この人たちが日本の高度経済成長を支えると共に、消費者として、膨大な「内需」を牽引してきました。小学校が一斉に増えたのはこの世代が学校に行く必要があったからですし、住宅産業が伸張したのもこの世代が結婚し、子育てをする過程で起ったことです。道路もこの世代が「マイカー」を所有したために必要になりました。
    バブルが崩壊した1990年代、本来「内需」は落ち込むはずでしたが、実は統計を見ると消費はさほど落ちていないのです。なぜならば、団塊の世代がその頃40代後半で、その子供達、すなわち「団塊の世代ジュニア」といわれる1970年(昭和45年)前後に生まれた世代が一斉に20代になり消費を親と共に支えたのです。「団塊の世代ジュニア」もまた数年にわたり年間200万人以上生まれているのです。
    この世代が、新しい住宅を必要とし、新しい衣類を必要とし、新しい車を欲しがったので、消費、すなわち「内需」が落ち込まなかったのです。
    ところが、その「団塊世代ジュニア」の子供達は、年間120万人前後しか生まれませんでした。1990年(平成2年)頃の世代です。つまり、「3代目の団塊の世代」は発生しなかったのです。この世代が祖父母や父母の世代のように年間200万人生まれていれば、現在20歳前後ですから、「内需」を支えたはずなのですが、この世代は「数」が足りない。

    つまり、世代として「日本」は収縮の方向に進んでいます。2009年日本で生まれた新生児の数は、年間106万人ですから、数年を経ずに年間100万人を切るようです。逆に昨年死亡した人間の数は年間114万人です。すでに万単位で、死亡する人間のほうが多くなっています。

    そして、日本人の「平均年齢」は、45.1歳です。
    日本がオリンピックで「金メダル」が取れなくなった理由もまた誰も正確に告げてはくれません。
    「平均年齢45歳」の国家が、スピードや高さなどの肉体の優劣を競う場で、抜きん出た成績を残すのはなかなか厳しい。ちなみに、2020年の平均年齢は「49歳」です。2030年は「53歳」・・・・。つまり、モノを欲しがらない世代が国民の中心を占めていくのです。

    なぜ、「組織活性化」活動を急がなければならないのか?
    「企業の存続と発展」を考えるとき、「速度」が必要であり、本気の取り組みが必要な本当の理由です。

    これは、昨年(2010年)の1月に書いた文章ですが、東北地方の「復興」が叫ばれる今こそ、不透明な「時代」が目の前に立ち現れている今こそ、頭の片隅にとどめておいていただきたいと思います。
    【組織変革】のために残された時間はそう長くはありません。
    そこに留まっていることが、最大のリスクなのです。

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