経営者の「言い訳」で一番多いものは
「いつも言っているんですけど・・・・」
というものです。
組織の中でうまくいかないことが起こり、原因を追究しているときに、多くの経営者がそう言い始めるのです。
「いつも言っているんですけど・・・・」
実は、原因は分かっているのです。そしてそのことについて経営者は組織に向かって話しかけているつもりでいるのです。しかしながら、多くの場合それがうまく伝わってはいません。
なぜでしょう。
「言うこと」と相手が「理解すること」と「納得すること」は意味がまったく違います。
組織にとって、もっともやってはいけないことは、「思いつき」です。何の準備もなく、いきなり投げかけられた「言葉」は、投げかけられた相手が個人であれ組織であれ、「困惑」をもたらします。時にその言葉は、相手にとって外国語」のようなものであったりします。
朝礼や会議に立ち会うことがあるのですが、冒頭、経営者がこう切り出すシーンに出くわすことがあります。
「今朝の新聞に書いてあったので、すでにみんな知ってると思いますが・・・」
みんなが知っていると思って話し始める話は、聞くほうには「突然」の話であり同時に実に「唐突」な話なのです。「突然」で「唐突」なので、聞いている側はきょとんとしている。きょとんとするだけではなく、面白くないという顔をしている。面白くない話が、相手に届くわけはなく、結局何のために話しているのかまったく分からない。
準備のないところに投げ込まれた「言葉」は、組織にとっては、時に「外国語」です。経営者が「外国語」を話していては、「理解する」も何もありません。「理解」できていないので、聞いた側は「納得」をしていない。そして「納得」していないことを、個人も組織も実現できないのです。
「いつも言っているんですけど・・・」
という経営者の言葉は、言い訳です。「理解させる」という前提のない経営者の言葉は組織の心に響きません。そのための準備や構想がなければ、組織を動かすことができません。
「昨日の【クローズアップ現代】でこんな話をしていたのはみんな知っていると思うが・・・・」
こう話し始めた社長の話を聞いている社員たちの表情をじっくり観察する機会がありました。ものの見事に、誰も本気で社長の言葉を聞いていませんでした。全員時計を気にしているようでしたし、何よりも社長の話が終わると、一斉に持ち場へ散っていきました。
さて、皆さんの組織では、どんな「言葉」が飛び交っているのでしょうか。
今しばらく寒さが続きますが、ご自愛ください。
今週もお元気で。
戸敷進一でした。