隔週でメルマガを発行しています。タイトルは「南風通信」。15年ほど前、まだ福岡に事務所を構えず「宮崎」を起点にして動き回っていた頃、南九州の片隅から日本や世界を眺めてみると随分変なことが多いと思い、南風、すなわち田舎から感じる事柄について書き始めたものでした。以前は毎週だったのですが、最近は体調や仕事の関係で隔週になってしまいました。
メルマガである以上、ある程度時事的なタイムリーさは必要です。
今週配信したものを掲載します。
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2015,4,13 メルマガ「南風通信」より
こんにちは。戸敷進一です。
新年度が始まりました。組織内の移動や入社の儀式も終わり、そろそろ本格的な業務開始の頃でしょうか。政治ニュースや経済ニュースを見ていると、今年もまた激しい動きがありそうな気配で、気の抜けない日々が続きそうです。
すでに日本の電子産業はピークを過ぎてしまったようで「シャープ」の疲労困憊ぶりが大きく報道されています。液晶技術の中国移転や一度は破談になった台湾の鴻海精密工業(ほんはい)の金融支援の話が持ち上がっていますから他の電子機器メーカーのような道筋をたどるのかもしれません。すでにサンスイ、アカイ、ナカミチ、新日本電気、ビクター、アイワ、サンヨー、エルピーダ、ルネサスなどというメーカーが第一線から姿を消しているのですからシャープも油断できません。
また「小売店の異端」と言われていたドンキホーテHDの時価総額が6783億円で小売業の6位となり、百貨店業界首位の三越伊勢丹HDの同6635億円の7位を抜いたというニュースにも驚きました。気をつけておかないと、従来型の思い込みや先入観だけで社会を見ていると肝心な「時代変化」を見逃してしまうかもしれません。
時代は絶えず動いています。目の前だけではなく、遠い世界でも同じように動いています。そしてそれらは時に大きな動きとなって自分たちの身の回りの動きとなって現れます。その時になって慌てないために、そしてこれから先をきちんと想像し組織や自分を守るために、気を抜くことなく世の中の動きに興味を持ち続けなければなりません。
新年度のニュースの中に、信州大学の学長が新入学生にこんな話をしたという記事がありました。
「スマホやめるか、大学やめるか」 信州大入学式で学長 (朝日新聞)
信州大の入学式が4日、松本市総合体育館であり、山沢清人学長は、8学部の新入生約2千人に、こう迫った。
山沢学長は、昨今の若者世代がスマートフォン偏重や依存症になっている風潮を憂慮。「スイッチを切って本を読み、友だちと話し、自分で考える習慣をつけ、物事を根本から考えて全力で行動することが独創性豊かな学生を育てる」と語りかけた。(後略)
別のニュースではこのように書かれていました。
「信州でもものやサービスがあふれ始めました。その代表例が携帯電話です。スマホ依存症は知性、個性、独創性にとって毒以外の何物でもありません。スマホを切って本を読みましょう、友達と話をしましょう、自分で考えることを習慣づけましょう」
思わず吹き出してしまったのは、学長が「ものやサービスがあふれ始めた」と言いながら、これからの時代を生き抜いていかなければならない若い世代に「時代の最先端のスイッチを切れ!」と言っている矛盾に気づいていないということでした。そもそも「物事を根本から考え全力で行動すること」と「スマホ」は一切関係ありません。本を読むこともスマホを見ることも若い世代にとっては大切なことです。それを「同列」に見ることのできない旧世代代表の言葉がまさにこの学長の言葉です。4年後に時代の最先端の端末も扱えず、ものやサービスがあふれていることも知らないようなその大学の卒業生など社会の中では通用するわけがない。
今から35年ほど前、測量学校というところに入学をしました。初日の授業の時、その学校の教頭が「測量史」の中でにらみ算という暗算の技術を紹介し10桁以上の数字を暗算で加減乗除して見せ「測量技術者は数字を扱う専門家である!これくらいの技術を身につけないといかん!!」「山の中で電卓が壊れたり電池が切れた時にどうするんだ!!」と叫び学生たちの度肝を抜きました。帝国陸軍測地測量部の出身でまさに鬼軍曹のような人物でした。
そしてその授業の次の時間に、国土地理院で学んだ若い助教授が「測量概論」の冒頭で、教頭の名前をあげて「にらみ算」の話を聞いたかと尋ね「山の中で電卓が壊れたらどうするんだ!という話をしたか?」と訊きました。そうだと答えると彼はすました顔でこう言いました。
「そうだ、測量で山の中に入って電卓が壊れたら大変だ。だから山に入るときは予備の電池を忘れないようにしようね。壊れるといけないからもう一台必ず電卓を持っていくようにしようね」「これからはコンピュータの時代になるので(当時はパソコンという言葉はありませんでした)そのことを忘れずに勉強をしてください」「暗算技術も当然重要なのだが、最先端技術も大切だからね」
後にその学校の校長を務めるその人物の最初の授業でした。もっとも十数年前にその新しい校長に会った時、彼はその話を忘れていましたが。
若い世代を育てるためには育てる側に多角的な視点と現代的な感性が要求されます。私が学長ならば入学式でこう叫びます。
「本も読めよ。スマホもやれよ。忙しい4年間が始まるぜ!先人の知識と知恵を学び、同時に時代の最先端を味わい、時代を切り開く人間になれよ!いいか、ぼやぼやするんじゃねぇぞ!一生は29200日しかねぇんだ!分かっとるか!!」
記事にあるような学長のいる大学や時代の意味を理解していない経営者のいる大学や企業など辞めてしまったほうがいい。
少々過激ですが・・・。
今週もお元気で。戸敷進一でした。