船をきちんと動かすためには、さまざまな機能が、正しく動く必要があります。
航海士、機関長、甲板長、機関長などというそれぞれの専門家が部下を掌握してそれぞれの機能を担っています。この他にも、旅客船であればスチュワードやスチュワーデス、通信を担当する通信長、料理を担当する司厨長、外航航路であれば船医も乗船します。それはまさに、組織内にさまざまな「機能」を持つ企業そのものです。営業、総務、経理、調査、開発、販売、施工、製作、広報・・・・。
それらの「機能」を統括するのが、船ならば「船長」であり、企業ならば「社長」ということになります。
何もかも順調であるときに、船長がやらなければならないことは、それほど多くありません。各責任者からの報告を聞き、確認だけをしておけばいい。全てが順調なのですから、船長室で居眠りをしていても一向に構わない。客船ならば乗客に愛想を振りまいておけばいいかもしれません。
企業も業績が良いときは、社長の出る幕は少ない。むしろ専務や常務、部長たちが忙しい。業績を上げるため、ライバル企業と競り合うために、各部門の責任者たちが動きます。
船長や社長の真価が問われるのは「荒天」のときです。すなわち、単なるアクシデントではなく進むべきか、退くべきか、あるいは進路を変えるべきか、どこかに一時避難すべきかを迫られる場面です。
「判断」をするのは、トップです。
船ならば船長が、それを決定します。それぞれの責任者の意見を聞くことはあります
が、あくまで意見聴取であり、トータルとして指示を出すのは船長です。企業ならば、当然社長がその任を負います。
今が企業にとって「荒天」であることは間違いありません。目の前の「売上」が落ち、そこから見込めるはずの「利益」が確保できず、その最中にも時代は「変化」し続け、日々組織が古びて行く。人材を育てようにも、先の風景が見えないために、なかなか方向性が決まらず、挙句に金融機関の姿勢も以前とは違う。まさに「嵐の中」を進んでいる。
船ならば、「船長」が判断をしなくてはなりません。「行くべきか」「引くべきか」「進路変更か」「一時避難か」・・・・。
そのときの「判断基準」は【目的】です。その船が、漁船なのか貨物船なのか、あるいは客船、遊覧船なのか、極端にいえば軍艦なのかという目的によって、判断がまったく違ってきます。客船ならば、まず乗客の安全を第一に考えなければならず、貨物船ならば、貨物の安全が優先する。軍艦ならば、目的地到着までの日程が最優先になる。
企業も同じです。
【組織の目的】によって、組織の運営方法や進むべき方向が違います。
その判断は、社長が下さなくてはなりません。
「船長の孤独」は、また「経営者(社長)の孤独」でもあります。
厳しい経営環境の中で、その孤独と闘わなければならない社長をたくさん知っています。日々、組織を鍛え、人材を育成し情報を収集し、「荒天」に備えなければならないわけはそこにあるのです。
今を凌ぐためには、それ以前の「姿勢」が問われます。
将来を凌ぐためには今の「姿勢」が問われます。
船長の孤独、社長の孤独・・・・。