組織活性化コラム

老舗の「後継者」たち

    連休の中の「日曜日」。
    100枚を超える印刷をする必要があって、一人で事務所に出かけました。古い建物なのですが、セキュリティーだけは日本を代表する「セコム」なので、誰もいないビルはまず開閉からめんどくさい「操作」をしなくてはなりません。エレベーターも「キー操作」をちゃんとしないと自分の事務所まで上がれない。
    まぁ、50歳を越えたおじさんには、少々厳しい「関所」でした。

    もっとも、8階建てのビルに誰一人いないので、仕事が随分とはかどりました。印刷の合間に、原稿を書き、書きかけのレジュメを仕上げました。印刷物をホッチキスで留め、袋詰めまで思ったより早く出来ました。
    日曜日なので、早めに部屋へ帰ろうとして、机の上に企業情報誌が載っているのに気付きました。毎週届く情報誌なのですが、先週は事務所に寄る時間が少なくて目を通していませんでした。
    荷物をまとめ、一度座りなおして目を通し始めて、知っている企業の名前を見つけ、息を飲みました。{倒産情報」の欄にその会社の名前があったのでした。

    今から10年ほど前、まだ私が駆け出しのコンサルタントだった頃にお世話になった長崎の企業さんでした。当時私の事務所があった宮崎から長崎までは随分交通の便が不便で、陸路を使ってもフェリーを使っても移動に5時間以上かかっていましたが、2週間に一度通い続けた企業でした。
    その頃、私より少し年下の30代後半の「後継者」がいて一緒に組織の仕組みを考えたものでした。
    その企業が、倒産・・・。
    記事によれば、昭和15年創業、昭和30年法人改組とありますから、会社としては55年続いていたことになります。先月同じように昔お付き合いのあった宮崎の企業も倒産していますが、ここも50年以上の社歴を誇っていました。そして、そこにも私より少し年下の「後継者」がいたのでした。考えてみると、それぞれに似たような年齢だったでしょうか。

    誰もいない、福岡のビルで、日曜日の午前中、随分落ち込んでしまいました。
    その頃、後継者の彼らに話していた話は、今話している内容とほとんど変わりません。しかしながら、若かった私の「言葉」に説得力がなく、同時に「成功事例」もなかったように思います。
    今ならば、倒産させるにしても「ソフトランディング」の道筋を何年か前から探り、幾つかの手を打つことも出来たはずなのですが、果たしてどんな形で「着陸」させたのかどうか・・・。

    思えば、どちらも「老舗」の匂いの強い企業でした。「従来型」の枠組みが強く、後継者たちが動けるスペースが無かったように思います。そして、その後継者たちに「骨」も感じなかった。

    帝国データベースの資料によれば、倒産する企業の3社に1社は、創業30年以上の老舗企業」とありますが、統計だけではなく、身近な所で立て続けにそれが起こっています。

    「こりゃぁ・・・」

    日曜日の午前中、誰もいないビルの中で、密かに「感じるもの」「考えるもの」がありました。

    関連記事

    TOP