2016年が暮れようとしています。本年は大変お世話になりました。
特に今年は「最強の組織をつくる【5S】のススメ」(現代書林)という本を出版しまして、私にとっても思い出深い年となりました。何よりも皆様方の厚いご支援により出版不況の中「増刷」が決まり、来年には「電子書籍化」も決まりました。他のメディアからの原稿依頼なども来まして、ひとえに長年のお付き合いのある皆様方の応援の賜物だと深く感謝しております。本当に有難うございました。
さて、本年最後の「コラム」となります。数ヶ月前に書き上げ、帝国データバンクの「帝国ニュース」に掲載されたものですが、卒爾ながら今年一番のコラムだと思います。今までの私の考えとこれからの指針にしたい内容です。
【帝国ニュース 11月号掲載コラム】
「子象の杭」の話
心理学の分野で「子象の杭」と呼ばれる話があります。象は現代の地球上で最大の生き物であり、その力も最大です。普段はおとなしい生き物ですが、いったん怒り始めると一般の家屋など簡単に破壊しますし、大型のトラックなども軽々と鼻先で横転させます。
しかし、長い歴史の中で人間はその象を飼い慣らし、農作業や資材運搬などで利用します。あるいはサーカスなどで芸を仕込み、それを披露して人々の喝采を浴びます。
さてその巨大で力のある象をどのようにして飼い慣らすのかをご存知でしょうか。象を飼い慣らす方法は「子象」の時代にあります。生まれたばかりの象や捕まえてきた子象は丸太でできた杭に繋がれます。大人の象ならば鼻の先や大きな足で踏みつければ簡単に折れたり抜けたりする程度のものですが、子象にとっては壊すことのできない杭です。動物の本能として自由に動き回ることを望み、子象は何度も杭を壊そうと試みるのですが、杭はびくともしません。そのうちに子象は自分の力ではどうにもならないと思い込み、杭に逆わなくなると言います。つまり意識の中に杭は絶対的なものであるということが刷り込まれ、成長してからも杭に繋がれたた途端おとなしくなるのです。幼い頃から杭につながれた子象はこうして一生杭に繋がれたまま人間の仕掛けた「偽装限界」の中で一生を終えるのです。
「偽装限界」との闘い
このことは、ある意味人間にも当てはまることです。多くの人間は、親や教師、あるいは歴史や社会からある種の刷り込みを行われていて、本来の自分が持っている能力を発揮することなく日常を過ごしています。 「どうせ私(うちの会社)なんて・・・」「そんなことを言ってもできっこない」「そりゃぁ無理だよ!」 などという言葉は、自らまたは周りから刷り込まれた「杭」、すなわち「偽装限界」なのです。一度その杭と本気で向き合い、死に物狂いで力を込めたらあっさり抜けるものなのかもしれません。中小企業の世界には、5億の壁、10億の壁、30億の壁、50億の壁などという言葉がありますが、これもまた自分達が勝手に思い込んだ「偽装限界」なのです。中小企業であること、地方であること、人材が不足していることなども自分たちの思い込みです。なぜならば多くの中堅企業や多くの大手苦行ですら最初のスタートラインは同じでした。
100億円企業への道
先月、11年ぶりに一度だけ講演をしたことがある企業で研修をしてきました。帝国データバンクを通しての話でしたが、なぜ11年ぶりに私を呼んでくれたのかを尋ねると、昨期年商が100億を超えたのだが社員が足元を固めるべきだといい始め少し前向きな意欲に欠け始めたので久々に気合を入れて貰おうと考えて依頼をした、という社長の話でした。思わずメモが止まったのは、11年前には20億程度の企業であることを知っていたからです。おまけにこの11年間の間にはリーマンショックと被害誌日本大震災があって多くの企業が成長を阻害されていたはずです。11年前の私の講演がきっかけで会社が変化することができたというお世辞めいた言葉も頂きましたが、その組織はどこかで「子象の」を抜いたのだろうと思います。 さて、個人と組織の「子象の杭」はどこにあるのでしょう。自分の壁は自分で壊す以外に道筋はありません。(以上)
いかがでしょう。「子象の杭」は自分たちの意識の中にあります。当然私の中にもあります。その「杭」との闘いに勝利しない限り、次のシーンはつかめません。私もこの「子象の杭」と闘い、新しいステージを築いて行きたいと考えています。
皆様、良いお年をお迎えください。