組織には「職位」と「役職」というものがあります。
「役職」は、個別の業務に応じた呼び名のことで、例えば部長と支店長は「役職」が違いますが、「職位」が同じということがあります。つまり組織における「責任」に関する表現の違いと考えていただければいいでしょうか。
中小企業の場合、そうしたことはあまり意識されませんが、大きな組織の場合は、大切なことです。何しろ「責任」の在り場所を示しているのですから、業務を遂行するための「役職」と「職位」の関係は明確になっていなければ、組織が混乱をします。つまり、部長の言うことを優先させるべきなのか、支店長の指示に従うべきなのか。あるいは、予算の権限はどちら側にあるのか。部下の育成に関する責任のウエィトはどちらの方が重いのか・・。ある意味、「職位」や「役職」の明確さは組織の根幹に関わることです。
中小企業は組織規模が小さいのでそこまで厳密に突き詰める必要はないのですが、そうした組織上の明確さと、「責任」のありようについては一度明確にしておく必要があります。
例えば、組織上で何かの判断を上に仰がなくてはならなくなった時に、その明確さが動きの違いとなって現れます。
1.一般社員(幹部社員以外)は、問題の発生や対処の仕方を上司に尋ねる。
2.幹部社員は、その問題の「原因」を追究した上で、対処の仕方を上司に尋ねる。
3.経営幹部は、その問題の「解決策」を考えた上で、行動の可否を上司に尋ねる。
同じ、「上司に相談する」という行為を行うにしても、意味がまったく違うというのはお分かりいただけるでしょうか。
1.が、係長以下の社員のことです。2.が課長級、部長級のことです。3.が経営幹部(筆頭部長、常務、専務)のことです。事業規模や組織の構成上の問題で、一概に例に挙げた「役職名」がそれぞれの組織に一致しているかどうかは別にして、そうした「動き」の違いが、組織の優劣の違いとなっていることが多いのです。
社員全員が、経営トップである「社長」に、絶えず「どうするんですか?」と尋ねている姿は、組織とは呼べません。「役職」だけではなく「職責」に関する明確な決め事がなければ組織は機能的に動かず、同時に、組織の「教育訓練」の方向性も定まりません。
中小企業の「人材育成」という活動が一向に進まないのは、そうした理解が経営トップにない事が原因なのです。
さて、皆様方の組織における「職位」についての考え方や「人材育成」はいかがでしょうか。次の「幹部会」のテーマとしてぜひ考えてください。