最近、少々困ってしまうのは「時代に合わなくなったこと」に気付かない経営トップたちが、若者を追い出し始めているシーンを何度か目撃することです。
「辞めてしまえ!」
「辞めても構わんぞ!」
目の前でそうした発言を聞くと、相当胸が痛む。客観的に見て、正しい発言をしているのは若者の方なのです。しかしながら、経営トップは激しい口調でそれを否定する。そうした内容は経営方針や経営理念に関することなので、第三者が関わりにくい問題です。
昨年の春に書いたメルマガ「南風通信」の文章を再掲します。
【今週の言葉】・・・ 選択肢と価値観
こんにちは。戸敷進一です。
ようやく「春」がやって来ました。北国ではまだ雪深いところもありますが、それでも確実に「春」が来ました。
何年か前、ちょうど4月1日に青森県の十和田湖に行ったことがあります。冬季閉鎖の道路が除雪され、その日から一般車両が通行できるのでした。生まれて初めてスタッドレスタイヤを装着した車で、向かいました。南九州の育ちなので、恐る恐るのドライブでしたが、たどり着いた「十和田湖」の美しさは、忘れられません。降り積もった雪がすべての音を吸収しているのか、神秘的な静けさを体感しました。そうした北国もまた春です。
「100円の人参」と「120円の人参」のどちらを客が選ぶかというシーンをテレビで見ました。何も考えていない人は「100円」を選び、少し何かにこだわりのある人は「120円」を選びました。その差は何かというと、買い手の「価値観」の違いでした。
「安い方がいい」
という価値観と
「色、つや、形を含め、産地が明確であること」
に価値観を見出す人との差がそこには現れていました。
普段の我々の日常を振り返っても、様々な場面でその価値観に従って判断を繰り返しています。とにかく「安く」という価値観もあれば、これは「高くてもいい」をという価値観もあり、また「これだけは」というその人のこだわりや生き方によって行動が変わってくるのです。
現代は、昔のように「情報」や「品物」が少ない時代ではなく、「成熟した時代」なので選択肢と価値観は多岐にわたります。「作れば売れる」「並べれば売れる」という時代ははるか昔に終わっています。重要なことは、顧客にどのような価値観をもたせるかということと、価値をどのように伝えるかということです。
これはまた、組織運営の中でも同様です。働いている人たちとどのように価値観を共有し、維持していくのか。新しい人達や異なる世代間で価値を共有できるかどうか。この部分への組織的アプローチがなければ組織の存続は難しいかもしれません。
組織運営を「商売」として捉えるか、「経営」として捉えるかもまた重要な選択の分岐点になります。
商売として考えると「売上」「利益」が先に価値として出てくるので、業績を残せない人物やパートナーは辞めさせるか入れ替えるしかありません。しかしながら経営と捉えると、そこには「育成」や「成長」「適性」という要素が生まれ、新しいアプローチが生まれます。
さて、御社の「組織の価値」は何でしょう。
もし以前より売上が落ちたり利益が取れなくなっていたりするとすれば「価値」が時代と少しずれているのかもしれません。もし、離職率が高く人が育たないのだとすれば、目指すものが商売で、経営でないのかもしれません。
組織の価値、個人の価値、商品の価値、サービスの価値、そして何よりも自分自身の価値は何なのでしょうか。日々慌ただしく業務に追われてしまいがちですが、多くの選択肢と価値観の中から、時代と自分たちにあった「価値観」を創りあげなければならない時代がやってきているように思います。
今週もお元気で。
戸敷進一でした。