とじき雑感

ソフトパッチ(soft patch)

    いよいよ11月のスタートです。
    泣いても笑っても、激動の2011年は「あと2ヶ月」。それから先どんな世界が待ち構えているのか、【備え】だけは怠りたくないと思っています。

    昨日(10月31日・福岡版)の日経新聞の一面は、いささかショッキングな見出しでした。

     

    【中小企業 海外へ集団進出 ~自治体も支援~】

    大きな時代の流れの中で、何物かが動き出した気がして、記事を読んだあと見出しだけを「日付」が分かるように写真に撮りました。ひょっとしたら何かの「分岐点」なのかもしれないと考えたからです。普通なら「固定資産税」や「雇用確保」で引き止めるはずの自治体までもが、工場の海外進出を後押しする姿は、従来の感覚からすると少々異様です。しかし、これが当たり前の姿になる時代も来るのかも知れません。先のことなど誰にも分かりはしないのですが、「大きな力」が動き出している気配を新聞の見出しから感じてしまいました。不意に、今年の夏に「メルマガ」に書いた【ソフトパッチ】という言葉が浮かびました。

    2011年7月25日発行 メルマガ「南風通信」より

    【「ソフトパッチ(soft patch)」】

    こんにちは。戸敷進一です。
    7月12日に、南鳥島近郊で発生した台風6号は、今まで見たこともないような奇妙な軌跡を残しつつ、7月24日現在も関東の東にあります。九州や四国に最も接近したのが19~20日で、その後日本を少し離れたので、すでにメディアは積極的に報道しませんが、まだまだしつこく残っているようです。
    発生当初から、真西に動き、その後九州から四国にかけて北上し、御前崎辺りからいったん南下して、また日本列島に平行して北上する奇妙な軌跡は、行く先が定まらないということと、速度が極端に遅いという意味で、何やら「迷走」を続けるわが国の政府の姿を思わせるようです。

    ソフトパッチ(soft patch)という言葉があります。主に金融や経済などの分野において、経済成長が一時的に鈍化したり、足踏み状態になっていることを表す比喩的な表現で、もともとは雨などで地面がぬかるみになっていたり軟らかくなっていたりすることなどを指す表現です。

    「ぬかるみ」・・・・・。

    まさに、昨今の経済状況にふさわしい言葉かもしれません。3.11の大震災以来、急激に落ち込んだ経済は、その後の複雑な展開の中で、なかなか脱出の糸口がつかめません。
    放射能による「水」「食料」「空気」「エリア」に対するリスクは全国規模で拡大を見せ、一向に沈静化する気配はありません。大阪の水道水からセシウムが検出されたり、九州・熊本、宮崎の茶葉からも放射能が検出されています。牛肉の放射能汚染も分かっているだけで数千頭に及び、今後、その他の食品からおびただしい量の数値が明らかにされていくのでしょう。まして、秋口からは主食である「米」が一斉に出荷されるので、「食料リスク」は、まだまだ始まったばかりです。

    おまけに、今年の夏は「節電」が最大のテーマになっていますから、製造のみならず、サービスや医療の業界においても、困難な状況が今から本格化し始めます。本来、近代国家や文明国では「水道」「ガス」「電気」といったインフラは、社会の話題の背後にあって、安定したものであるはずなのですが、そうしたインフラの心配をしなければならない、と言う意味からすれば、日本と言う国は、一時的であるにしろ、「発展国並」と言えるかもしれません。

    国際情勢の中で「円高」も予断を許さないので、製造系企業を初めとする輸出産業は、大きなダメージを受け続けます。ヨーロッパ・米国の金融不安が、もろ日本経済を圧迫している状況です。低迷を続ける日本の「円」に対する世界的安心感は、貿易黒字からきているのですが、これらも今後どのように動いていくのか予断を許しません。

    「ぬかるみ」の中では、こんな現象も起っているようです。震災以後、酒類の売上が前年比1割程度伸びている中で、居酒屋の売上が減少している。つまり、消費者が外食を控え、家庭内での消費に向っているということです。国内旅行も一時期の極端な落ち込みからは回復したようですが、本格的な状況には程遠く、連動して観光地やホテル産業も苦戦を強いられています。消費の「方向」も以前とは随分と変わってきています。

    「ソフトパッチ(にかるみ)」に足を取られたときにどうすべきなのか。
    じたばたすれば、ますます深みにはまってしまいかねません。かといって、ぬかるみが乾くまで「待つ」といったところで、乾くまで体力がもつかどうか・・・。
    近くに「木」があれば、その「木」にロープをかけて、全力を上げて体を引きずり上げて・・・・。土木屋であれば、ぬかるみを取り除き、新しい乾いた土を運び込み、脱出経路を造ります。あるいは、携帯電話で警察や消防へ連絡をして、ヘリコプターを用意してもらって、空中からロープを吊下げ、救助してもらうか・・・・。

    まずは、自分(たち)が置かれている状況を冷静に分析しましょう。単に
    景気が悪いだけなのか、社会が変化して来ているのか、時代の大きな転換期なのか。景気は「回復」するのか、いつまでも経営環境はぬかるんだままなのか。誰かが助けてくれるのか、あくまで自力で這い出さなければならないのか・・・・。

    ソフトパッチ(soft patch)。
    主に金融や経済などの分野において、経済成長が一時的に鈍化したり、足踏み状態になっていることを表す比喩的な表現・・・・。

    暑さの中で、過酷な経営環境が続きそうです。
    皆様、ご自愛ください。今週もお元気で。
    戸敷進一でした。

     

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