多くの経営者と言葉を交わす中で
「とじきさん、そうしたことはいつも言っているんです」
「しょっちゅう言っている」
「朝礼でいつも言っています」
という言葉を聴くことがあります。
つまり、組織の何ものかに関して、経営者は「気付いて」いて、それを絶えず組織に向けて「発信」しているというのです。
「言う」ということはとても大切なことです。人間は「知恵」の生き物であり、「言葉」はその根幹をなすものなのです。当たり前のことですが「言わなければわからない」というのはまさに正しいことです。下世話な表現ですが、男女間において、どこかで好意を寄せていることを表明しなければ、次のステップに進めない。雰囲気だけで、何事かが始まるというのは、まれなケースだと考えたほうがいい。だから、「言葉」にすると言うことは非常に大切なことです。
しかし、こと組織に関しては、そこに大きな【落とし穴】があるということにお気づきでしょうか。個人間と組織間では意味がかなり異なってきます。
組織において大切なことは、「言う」ということよりも、相手が「理解する」ということが大事なことであり、「理解した上で」次の「行動」に移すということがより重要なことになります。
つまり、「言う」ことと、相手がそれを「理解する」ということと、理解して「行動を起こす」
ということは、まったく別のことなのです。
「とじきさん、そうしたことはいつも言っているんです」
「しょっちゅう言っている」
「朝礼でいつも言っています」
「・・・・・・で?」
という私の意地悪な質問への社長たちの言葉はこうです。
「なかなかわかってくれません」
「馬鹿が多くて・・・・・」
「わかるまで時間がかかりそうです・・・・・」
組織を動かすときに、忘れてはならないのは、「企業は学校ではない」ということです。
教員の責任は、「言って」「教えて」「理解させる」までのことです。単純に言えば「2プロセス」の行為でしかありません。しかし、企業は、利益を機能的に追求しなければならない宿命を背負った組織です。そこには「言って」「理解させて」「行動させる」という「3プロセス」が必要なのです。学校教育で言う教育訓練と、社会に属した組織の教育訓練は、本質的に「別物」と考えなければなりません。
社会が「多様性の時代」を向かえているように、それぞれの組織もまた「多様な世代」を抱えています。
「言わなくたってそれくらいわかるだろう」
「言えばわかるだろう」・・・・・
そうした、従来型の意識からは、時代に適応した「人材」など育つはずはありません。
「言っている」の向こう側・・・・・。
組織を活性化するために必要な鍵がそこにあります。