ある美容室に「5S活動」を勧めたことがあります。
個性的な経営者で、当初「客商売だからそんなことは必要ない」「倉庫みたいにべたべたと表示する張り紙など出来るわけもない」とずいぶん反対されたのですが、半ば強引に「5S活動」をして頂きました。
不要なものを捨て、再配置として模様替えをさせ、みんなで使うものを識別できるように表示をしました。もちろん客商売ですので、「表示」には気を使いました。一般的な倉庫のように、文字で書くのではなく、文房具屋さんで売っている小さな丸いシールを棚や引き出しの隅につけてもらいました。そして、実務の責任者の方に「更衣室」にその分類した色についての説明図を作っていただき、開店前のミーティングの際全員に教えていただくことにしました。教育訓練の中で、「一人客一清掃」というキャッチフレーズを教えました。そして閉店時の清掃を徹底的にすることにしました。
3ヵ月後の経営者の方の発言です。
□ 店が全体としてすっきりした。
□ 近代的な感じの店になった。
□ 若い女の子たちに指示をしても、タオルひとつ探し出せなかったのに、素早く取り出せるようになった。
□ 経営者の方が、若い子たちを「怒鳴り散らしていた」回数が極端に減った。
□ 若い子たちが、おどおどしなくなった。
□ 店全体が「明るく」なった。
□ 若い子たちの「定着率」が良くなった。
□ 複数のお客さんに「感じが良くなった」といわれた。
「先生、5Sなんてたかが掃除に毛が生えたようなものだと馬鹿にしてたのに、こんなにお店の雰囲気が変わるとは思っていなかったわ。雰囲気だけじゃなくて、人まで変えてしまうのね。今までこれでやってきていたんだから、自分がすることに間違いないと思っていたのに、本当は違っていたのね。時代やお客の考えが変わっているのに気づかなかったわ。最近はね、置いている雑誌まで見直そうかと若い子達が話しているの。いつまでも「週刊女性」だけの時代じゃないってことがよく分かったわ」
経営に必要な要素は、たくさんあります。
しかしながら、スタートラインを間違うと、大手の真似をしたり、自分たちの組織に合っていないことを始めてしまう危険性があります。
本当のスタートラインは足元にあります。