バラバラ組織
「みんなで頑張ろう!」
「全社一丸!」
と経営トップが声をかけても、なかなか組織がまとまりません。あの手、この手で、組織を鼓舞するのですが、職位や職責で「ばらつき」がある。言っている意味が全員に伝わらない。ましてや、アルバイトやパートさんなど、時間でしか仕事を考えてくれないので、いくら言っても無関心なまま・・・・。
多くの中小企業でもっとも頭が痛いのが、この「まとまりの悪さ」ではないでしょうか。強く言っても、時間をかけても、結果は同じ。時代がものすごいスピードで変化しているので、組織も変化したい。そのためには、「全社一丸」になって取り組まなければならないというのに、なかなかそれが出来ない。
「だから、経営は難しい」
と、多くの経営者がどこかであきらめてしまっています。
「前の年、2500万円の赤字を出して、翌年5800万円の黒字を出した」企業があります。
「4期連続黒字を続け、今期いよいよ憧れの無借金経営に挑戦する」企業があります。
「銀行から見捨てられながら、2年後に単年度黒字を出した」企業があります。
これらの組織は「まとまり」が悪かったでしょうか。これらの組織は「全社一丸」ではなかったでしょうか。当然のことですが、全員がまとまったからこうした結果が出せたのです。
では、最初からこれらの組織が「まとまっていたか」ということになると、これも当たり前の話ですが、バラバラの組織でした。ひとりひとりは優秀なので、与えられた仕事に対しては一生懸命なのですが、組織全体のことになると、急に冷淡になるのです。組織の中にさまざまな問題があって、課題があるということは分かっているのですが、課題か帰結の段階になると、「出来ない理由」と「やらない言い訳」が続出し、挙句、「部門間の対立」や「個人の悪口」まで出てきます。
「営業がまずいのでろくな仕事を取ってこない」
「現場サイドに能力がないので、利益が出ない」
「総務の連中を見てみろ。あいつら遊んでいるじゃないか」
「部長も課長もつまらないので・・・」
「社員が馬鹿で・・・・」
「社長が詰まらん!」
「時代が悪い・・・・」
「業界は厳しくて・・・・・」
「頑張っているんですけど」・・・・・
組織活性化活動に取り組んでいない組織の現状は、こんな感じです。みんな頭で分かっているのですが、活性化させる方法が分からないので、「バラバラ」の状態です。
おまけに、組織には、さまざまな壁が存在します。ベテランから新入社員までという世代の違いと、男女という性差の違い、所属する部門の違いや職位によって、感じたり考えたりすることがみんな違います。だから、何をやっても、何を言っても組織はバラバラ状態です。
分かりやすさ、の不足
組織がまとまらない、全社一丸体制を作れない理由は、明確です。
組織が、組織に所属する人々へ語る言葉が、実にあいまいで、分かりにくいのです。「頑張ろう」「一生懸命に」「みんなで協力して」と言いながら、すべて抽象語なので、何を言っているのか良く分からない。つまり、組織の中に「分かりやすさ」という考えがないのです。
では、組織を活性化させるために、どのような分かりやすさが必要でしょうか。
ひとつは、「5S活動」という目に見える変化によって、「全体を意識させる」ということです。「5S活動」は、世代や性別や国籍などに関係なく、すべての人に理解できるものです。
たとえば、「清潔」な状態と「不潔」な状態のどちらを選ぶかと言えば、まず間違いなく、「清潔」を人は選びます。「綺麗」と「汚れ」の場合なら、「綺麗」を選び、「気持ちの良い挨拶」と「挨拶なし」ならば「気持ちの良い挨拶」を選びます。つまり、「5S活動」は実に分かりやすいものなのです。そして、「5S活動」は、全社を巻き込んだ「仕組み(システム)」なので、それぞれの活動も、分かりやすく進捗も達成度も熱意さえも見える。
この分かりやすさが、まず組織を動かします。
もうひとつは、「限界利益管理」と呼ばれる、自社の利益に対する管理体制確立による組織変化です。
組織の利益に関する考え方はさまざまなものがありますが、組織全体に「周知」出来るものはそう多くはありません。たとえば「経常利益」「営業利益」などという言葉は会計上では一般的で分かりやすいものですが、その意味を今年入社した18歳の女の子が理解しているでしょうか。停年間近の現場で働く人々が分かっているでしょうか。もっと言えば、アルバイトやパートの人たちが分かりますか、ということです。「減価償却費」「福利厚生費」「法定福利費」「貸倒引当金」・・・・。さて、組織の中のどれくらいの人が理解しているでしょうか。
実は、これが、分かりにくさの源です。つまり、組織にとってもっとも重要な意味を持つ【利益】に関して、組織は「分かりやすい説明」をしていないのです。
「絶対利益」とは、簡単に言えば「組織に一年間仕事があってもなくても、絶対に必要な金額の総計」のことです。
組織に仕事があってもなくても必要な金額は、本気になって経営トップが調べれば、一日をかけなくても出てきます。
仕事があってもなくても「人件費」は必要です。
仕事があってもなくても「光熱費」は必要です。
仕事があってもなくても「土地・建物代(賃貸料)」は必要です。
仕事があってもなくても「車両経費(車検・保険)」は必要です。
仕事があってもなくても「リース費(PC/FAX/ソフト代など)」は必要です。
仕事があってもなくても必要な「一般管理費」があります。
そして、何よりも、仕事があってもなくても「金融機関への返済」は必要です。
「決算書」「元帳」をめくれば、そこにそうした金額が書き込まれているので、経営トップがひとつひとつ理解しながら合計すると「絶対利益」がはっきりとします。
そして、その金額が出たら経営者はこう考えなくてはなりません。
「この金額を、全員で一年かけて集めたら、会社は絶対につぶれないではないか!」
むろん、この文章は説明文なので、細かな予測される税金や望むべき利益については省略していますが、基本的に組織は給が払え、毎月の支払いが可能で、金融機関への返済も計画通りに進みます。つまり、会社がつぶれないのです。
ここで、重要なことは、「絶対利益」は、売り上げと一切関係がないと言うことです。
「売り上げに関係なく、【絶対利益】を全員で集めると、毎月の給料やボーナスが払え、会社がつぶれない!」
これもまた、分かりやすい話です。
「5S活動」と「絶対利益」の親和性
「5S活動」は、活動性かが目に見えるので分かりやすい。
「絶対利益」は、自分たちの給料に関わることなので分かりやすい。
この二つの分かりやすさの組み合わせによって、中小企業は劇的に変化します。
今まで、曖昧模糊(あいまいもこ)としていた組織の活動に、縦と横の「補助線」が入るので、今やっていることがどれくらいずれているのかが分かる。横の人が、上の人が、下の人がやっていることが目に見える。つまり組織が活発に動き出すのです。
「前の年、2500万円の赤字を出して、翌年5800万円の黒字を出した」企業があります。
「4期連続黒字を続け、今期いよいよ憧れの無借金経営に挑戦する」企業があります。
「銀行から見捨てられながら、2年後に単年度黒字を出した」企業があります。
これらの組織もまた、そうしたプロセスを経て、結果を出したのでした。