「5S」活動は、「整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)」という分かりやすい【要素】を、手順を間違えずに「組織内」で行い、生産性の向上や組織のコミュニケーション能力の向上、顧客への安心を高め、最終的には収益構造まで変えてしまう「組織活性化の技術」です。
「技術」なので「目的」ではありません。それを「目的」にしてしまうと、単なる「片付け」に終わってしまい、生産性の向上や顧客満足の向上にほとんど寄与しません。一般的に行う年末やお盆前の「大掃除」が、数日、あるいは数週間たったら元に戻ってしまうのはそれが原因です。
「片付ければいいんだろう」
という程度の意識で行うので、効果も限定されてしまいます。期間的には「数日から数週間」、規模的には全員ではなくて取り組んだ「数人」が納得するくらいが関の山です。
活動を行う際に大切なことは「ベンチマーク」です。
「ベンチマーク」とは「基準となる点、あるいはレベル」のことです。
「ああ、ここくらいのレベルまでしなくてはならないのか・・・・」
という、事前の納得や活動途中の比較点検は大切です。
「他社事例から手順を学ぶ」
「【各要素】の活動写真からビジュアル的に理解する」
「異業種の5Sから、活動精度を知る」・・・・
弊社の「5S無料ギャラリー」や「チャレンジ5S 組織活性化マニュアル」は、そのあたりを意識して提供させていただいています。
コンサルティング中の企業からは、定期的に「活動報告書」を送ってもらいます。その時々の「進捗状況」を確認しておかないと、活動の方向やレベルがおかしくなってしまうことがあるからです。
数年前に全社で「5S活動」に取組み、大きな効果を挙げた企業が、昨年別の企業を買収し、再び【全社一丸体制】を作り上げるために、再び活動を始めました。先行して活動を行っている親会社と初めて活動する組織の「ギャップ」があり、当初スタートする時に少々足並みが揃わず、不安定な状態で活動を始めました。
数日前、その組織のある店舗のリーダーから「活動報告書」が送られてきました。
~経験が長い=理解がある、ではない。ということ。「この人は大丈夫だろう」はあてにならないので、一人ずつと対話の中で理解度を確認しなければと感じた。~
~紙資料は保存期間の決まったものを処分する業務を、毎年(できれば毎月)ルーチン化し、人の入れ替えがあった際にも対応できるようにする。~
~制服の一式に「myボールペン1本」をルール化し、事務所・フロント・ジムでボールペンの数量が変動しないようにする。文具を置きっぱなし、使いっぱなしにしない。~
~自分のロッカールーム内の整理を行う。他の人に開けられてもはずかしくないようにする。人数以上あるロッカーを1台減らし、スペースを有効に使う。~
~壁に掲示しているものに関して、◆業者連絡先関係:業務担当者が最新のデータに更新し新しいものをつくる。掲示はせずA4ラミネートで机の横へ緊急連絡先表の中に入れる。タブレットタイプのi padのようなものに名刺管理ソフトを利用し保管、社員、アルバイトもタブレットから閲覧できるようにする。(案)~
~所用で高松支店を訪問した際に、運営部事務所を見て「目指すところ」のイメージがわいた。棚の置き方、段ボール箱一つの表示の仕方など、準備の仕方も変わった。~・・・・・
驚いたことに、活動に取り組んでわずか2ヶ月で、このリーダー(女性)は、【活動の本質】にたどり着いてしまっている。
5Sは「技術」なのですが、その活動の本質は「業務のやり方の見直し」なのです。活動を進める中で、「これは何故こうなっているのか?」「こうした方がいいのではないか?」「これは誰と相談して(責任者)決めればいいのか?」という、従来の「業務のやり方」への疑問を繰り返すことにより、「より良い環境」を自ら作り出していく活動です。
初回の活動では、そこまで到達できる組織は少なく、むしろ視覚的(ビジュアル)な観点から、変化を確認していくのですが、このリーダーは、「活動の本質」を素早く見抜き、与えられたフィールドで展開を始めていました。
他の11部門からの「活動報告書」もそれぞれに進捗報告があり、的確な課題報告がありました。
真夜中近くに「報告書」を読んだのですが、「レベルの高さ」に驚いてしまいました。何故、初回からこれほどのレベルで取り組めるのだろうか・・・・。
【所用で高松支店を訪問した際に、運営部事務所を見て「目指すところ」のイメージがわいた】
なるほど、グループ内に「手本」があり、なおかつその「ベンチマーク」が高いのだからか・・・・・。
~ここから先は、統一された表示をすることと、キャビネットの中の文具やラック内を再び不要なものがないか考えることが必要と思われる。事務所内が片付いたことで「ルール」も決めやすくなった気がするので、大掃除に参加していない半数のアルバイトをどう巻き込んでいくかがカギになると思う。~
「活動報告書」の末尾はこう締めくくられていました。
こうしてこの部門の活動が他の部門の新たな「ベンチマーク」となり、組織の改善が進んでいく・・・。
種を明かせば、この組織は本コラムの「Voice」に寄稿して頂いた「津島会長」の会社です。もともと「人財」のあふれた組織ですが、活動を通じて、ますます「研ぎ澄まされて」行くようです。
(報告書の転用は、担当のS部長、担当リーダー(K女史)の許可を「強引」に頂いております(笑))