ある日、こんなニュース記事を見つけました。

〜トヨタ自動車は、国内工場の生産現場を束ねる係長級の「チーフリーダー(CL)」と現場を監督する「グループリーダー(GL)」に、それぞれ「工長」「組長」という日本語の肩書を復活させる検討に入った。組織の「長」として若手を育てる責務を自覚させ、現場のカイゼンの力をさらに強める狙い。来年からの復活を目指しており、実現すれば二十五年ぶり。トヨタ幹部は「片仮名で分かりづらくなった序列を日本語ではっきりさせ、後輩の面倒をしっかりみる上司になってほしい」と話している。現在、労使が議論を続けており、手当の新設なども検討している。(東京新聞)〜

組織の「長」として若手を育てる責務を自覚させる、という部分は、業種の違いや企業の規模を問わずに現代企業の課題かもしれません。【価値観の多様化】が進み、組織の中に「きちんと」「ちゃんと」という言葉ですら、職位や世代によって通じにくい時代です。そうした時に、昔の呼称を復活させるという試みは、組織経営や運営における「本質への回帰」が起こっているということでもあります。

あるIT系企業でこんな話を聞きました。
「組織の中で意識の違いが大きくていろいろと問題が起こっています。創業メンバーやその時に仲間に加わった連中はいいのですが、その後から入った連中との意識のずれがあって、組織がしっくりと来ないんですよ。どうしたものですかねぇ」
別の組織ではこんな現象が起きています。以前の組織が傾いて、その後ある企業と合併を果たし、再び業績が上がったのですが、その中で「苦難の時期を共にした人たち」と「業績を回復した後に入った人」との間に大きな溝が生じているのです。例えば、以前にはなかった手当が付くようになって以前からいた人たちはありがたいと思っているのに、あとから来た人たちは安い、と不満を表明しているのです。

こうした現象が起きている理由は、組織の中に【プロセス共有】というコミュニケーションにおける重要な要素が希薄になっているという背景があります。【プロセス共有】とは、共に働く人たちの間での「達成」までの共通の体験のことです。小学校や中学校の友人ちとの関係が何も気を使わず、長い期間維持できるのはこの【プロセス共有】というコミュニケーションの本質を踏まえているからです。
同様に、組織においてもこうした【プロセス共有】が必要です。

改めて【プロセス共有】を行うひとつのツールが「5S活動」です。整理・整頓・清掃・躾(しつけ)というシンプルな要素を組織特性に応じてシステム化する活動は、全社を巻き込んだ活動になります。経営者や幹部、中堅、一般という職位を越えて、世代を超えて、部門や部署を超えて、全社で完成までの【プロセス】を【共有】します。

「本質への回帰」はそろそろ始まっています。欧米式の模倣や単なる技術・ノウハウだけでは乗り切れない時代です。