経営者の方と話をしていて、受け待ち社員についての話がいつも話題になります。「自分で考えようとしない!」「言わなければしない!」「言うまで動かない!」などなど経営者の社員に対する不満の多くはここに集約されます。

「でも言えばするんでしょう。それでいいじゃないですか」と笑いながら私は応えるのですが、社長は納得しません。「それじゃ困るんですよ。いちいち私が決めないと会社の中で何も進まない。もう何年もそんな調子で社員が育ってこないんです。イライラが毎年大きくなるばかりです」。真面目な経営者であればあるほど社員に対する期待値が高く、会う度にそんな話をしてきます。

「命令」は組織の定め

 ではなぜ自分から考えたり動いたりする積極的な人間が育たないのかの理由を考えましょう。多くの組織にとって大切なことは「売上」と「利益」です。どんなに気の効いた綺麗事を並べても「利益」の出ていない組織は存続することが出来ません。たとえ何年かしのげたとしてもそのうちに消えてしまいます。その「売上」と「利益」を上げるために必要な組織の掟(おきて)は【命令】と【指示】です。何か新しい仕事が発生した時に誰かにそれを命ずる。命じられた者が疑問を持ったときには具体的な行動を指示する。つまり、一般的に業務は命令と指示で成り立っているのです。そしてその組織に属するものはそれに従うというのが決まりごとです。もしその命令に逆らったり、指示通りに動かなければ業務命令違反となり、それが度重なれば組織追放、つまり解雇されることになってしまいます。

業務からでは人は育たない!

 「受け待ち社員」は業務のスペシャリストです。上司の命令することを理解しそれを遂行するのですから、ある意味優秀な社員と言えます。軍隊ならばまさに手本となるべき人材かもしれません。

「いや、それじゃ困るんだ。細かいことまで私が判断をして指示を出さなきゃならないとなると身動きが取れませんよ」「でも無理でしょう。だって何年も命令と指示でしか動かなくしているわけだから、明日からいきなり自分達で判断しろと言ってもできるわけはありません」「しかし、朝礼や会議でいつも言っているんですよ。自分達で考えろって」

「うーん、しかし社長。言っている、というのは、新聞で読んだ、本を読んで知っている、ネットで見た、というのと同じですね。新聞を読んでも本を読んでもネットで調べても人は育ちませんね。そんなことぐらいで人が育つのなら大学教授など名経営者になっているはずですが、そんなことはありません。人は業務からだけでは育ちません。組織の人間はプロジェクトを通して育成する必要があります。プロジェクトとは、誰が、いつまでに、何を、どのように、いくらでするかという計画と実行のことです。5S活動でも他のプロジェクトでも構いません。そのリーダーとして役目を一度背負わせると人は一気に育ちます。そして受け待ち社員からやっと脱皮するんです」