経営者のための人材育成コラム

「当事者意識」の濃淡 〜幹部格差の現実〜

    ここ数週間ほど、あちこちに出かけ、企業組織の「幹部」の方々と話をする機会が多くありました。どこの組織も大なり小なり「課題」を抱えていて、その「課題」を先送りできなくなってきているようです。

     

    十分に「グローバル化」が進んだので、単純に国内のことだけを見ておけばいいという時代ではなくなり始めました。交通インフラが発達したために、狭い地域の地元の同業者だけがライバルではありません。ましてや情報通信環境が整備されてしまったので、異業種や遠い地域の人々までがライバルになってしまいました。10年ほど前には想像もつかなかったような「現象」や「風景」が目の前に広がっています。iPhoneの登場は5年前の話であり、iPadの登場はわずか2年前なのです。つまりスマホは5年前から、携帯端末は2年前からの仕組なのですが、その普及率や影響力は我々の想像力をはるかに超えています。そうした新しいツールの出現によって、ビジネスやコミュニケーションの有り様が随分と変わってきています。地域格差や年代格差が言い訳にならないほどに時代は大きく動いています。

     

    組織で「課題」を先送りできなくなってきたという理由は、そうした変化の「圧力」に対して組織や個人がきちんと対応できなくなってきたことにあります。つまり「奔流」のような時代変化に対しては、受け待ちスタイルでは対応できないのです。組織や個人で「一歩先」「半歩先」を先読みして準備しておかなければ流れに飲み込まれてしまいます。そしてその準備は、一人で出来るものでもありません。組織の中では「幹部」と呼ばれる人々が、その先駆けを担わなければなりません。しかしながら、現実としてこの「幹部」たちの格差が大きいように感じています。

    組織の課題を「自分の課題」として受け止める幹部がいます。

    組織の課題を「社長の課題」として考える幹部がいます。

     

    この差は天と地ほど違います。組織の課題を「自分の課題」として受け止める幹部たちには【当事者意識】があります。幹部としての自覚があり、幹部としての責任感があり、幹部としてのプライドがあります。組織の課題を「社長の課題」として考えている幹部たちは、当事者としてその課題を捉えていないので、組織についての発言が「評論家」です。つまり、他人ごとであり、誰か他の人がすべきことであり、何よりもすべてのことに対して「言い訳」をする・・・。

    「僕らが動きづらいのは、社長が方針を明確にしないからであって、社長がつまらないから僕らは動きづらいんだ。僕らは一切悪くない!」

    口を開くたびに、こんなことを言っている人達のことを「幹部」とは言わないのだが、本人たちは「幹部」だと思っているところがおかしくもあり、情けなくもあり、大いに対応に困る。いっそのこと、

    「あなたは組織の幹部ではなく、組織の患部だ!」

    と教えてあげたいのですが、仕事柄角がたつので、静かに見守るしかありません。

    組織の課題を「自分の課題」として受け止められる幹部が何人いるかどうか・・・。

    今、「幹部」に問いかけられているのは【当事者意識】です。

     

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