組織の中の「共通言語」

 

「5S活動」が組織活性化させるもっとも大きな理由は、「5S活動」が組織の中の【共通言語】であるということです。

 

組織の中には、さまざまな職位や職種があります。部長、課長、主任などという立場や、事務系、現場系、販売系、営業系などという環境の違いです。また、世代とう違いや性別の違い、最近では国籍の違いまであるでしょうか。つまり、組織は意識しておかないと、それぞれの考え方や言い分や理解度に大きな差があるのです。組織にとって一番重要な利益ですら、立場や職種によって随分と違います。ある人にとっては、売上が全てであり、ある人は販売することや物を作ることが全てであり、時には集金の金額や支払いの金額でしか利益を考えられないなどというばらばらな状態です。本来「全員で」取り組まなければならないのですが、実態はなかなか「全社一丸」になれません。

 

特に「世代間の違い」は大きく、ベテランの世代が「それくらい言わなくたって分かるだろう」と考えていても、若い世代は「言ってもわからない」ということもあります。これは、若い世代の責任ではなく、育った環境がまったく違うので、理解できないのです。講演などでよく話すのですが、30歳以下の世代で「スティーブ・マックイン」を知っている人たちは10%もいないのです。「アラン・ドロン」も同様です。ベテランにとって当たり前のことでも、若い世代では当たり前ではないことが、実はたくさんあるのです。

 

こうしたばらばらの状態をどのようにしてひとつにまとめ上げるかは、経営者や経営幹部の「仕事」です。そのときに「5S活動」は共通言語として組織の中で展開できる唯一のものです。

 

「汚い事務所(工場)と綺麗な事務所(工場)のどちらで働きたいですか?」

「どこにものがあるのか分からない状態をどう思いますか?」

「取引先できちんとした挨拶をしてもらうと気持ちはどうですか?」

「清潔な格好と不潔な格好のどちらがいいですか?」・・・・

 

こうした、単純な問いかけに対して、よほどの変わり者でない限り、綺麗で清潔で丁寧な方を選びます。つまり組織の中で共通で語れる事柄が「5S活動」なのです。

 

「意識改革」のツール

実際に「5S活動」を行って、組織を活性化させた組織(企業)は数多くあります。

 

ある組織では、パートのベテラン女性たちがやる気を出し、あっという間に組織の雰囲気を変えてしまったことがあります。別の企業では、20代の若い世代が活動を推進し、数ヶ月で組織の仕組みを整えてしまいました。「5S活動」は、いわば翻訳の必要のない【共通言語】なので、いったん動き出すと実にスムースに活動の成果が目に見えます。

 

この「目に見える活動」という特質は、中小企業にとっては重要なことです。大手は、もともと仕組みが整っているので、改めて新たな活動に取り組む必要がないのですが、多くの中小企業の場合、今まで本気になって「仕組み」を作り上げたことがありません。いわば、今までのやり方を踏襲するか、ほかの同業者の真似をするという程度の取り組みが少なくないのです。つまり、自分たちの手で組織の中で新しい何かを作り上げたことがないのです。

 

「5S活動に取り組んで、初めて自分たちも仕事のやり方や仕組みを考えてもいいのだ、ということを知りました」

 

ある企業の若い5S担当者の言葉です。

「自分たちの会社のことを自分たちで考える」

という実に素朴なことですら、中小企業の現場では行われていないのです。自分たちの頭で、会社の仕組みを考えることの出来る人間が育つということが、組織の業績に影響を与えないはずはありません。実際に「5S活動」に取り組み、-2500万円の赤字から+5800万円のV字回復を達成した組織もありますし、「5S活動」以来4期連続黒字という企業もあります。つまり、活動が利益に直結しているのです。

 

組織の「意識改革」は、言葉や文字やイメージで出来るものではありません。具体的な変化を目に見える形で見せることによって初めて成功します。その意味からすると「5S活動」は、意識改革にとって強力なツールとなります。

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