
「組織活性化」のための【プロジェクト】を立ち上げようとする時、「推進メンバー」の選択はなかなかむつかしい。
「組織活性化マニュアル」には詳しく書きましたが、推進のための「エンジン」をどこに設置するか、どの組織も当初悩みます。小さな組織であれば、まず経営者自らがエンジンとなって【プロジェクト】を興さなければなりません。安定した組織なら、職位を考えてメンバーを選びます。時に、その組織の事情により「若手」を抜擢することもあります。
抜擢された「若手」は、大変です。通常の業務と平行して【プロジェクト】を勧めなければならないので、途中で「悲鳴」を上げる。同僚や先輩を説得し、上司との対話まで守備範囲に入ってくる。
気をつけておかないと、往々にして「やらされ5S」、すなわち、組織から押し付けられた「5S活動」になってしまう可能性があります。
その組織の推進メンバーは「若手」でした。最初、顔合わせをしたときから、随分不安そうな顔をしていました。
「これから何をすればいいのか?」
「自分達に出来るのだろうか?」
「うーん、めんどくせぇ・・・・」
まぁ、そんな感じです。
午後から、その組織に行って驚いた。
まず、どのフロアもどの部署も「明るい」!。棚やもので遮られていた「窓」から光が差し込んでいる。最初に訪問した時の「埃っぽさ」がどこにもない。どの場所も、丁寧に「清掃」されている。どの部署も「動線」が確保され、広々としている。何よりも、いたるところに「新しいアイディア」が転がっている。
以前は雑然としていた「データ室」の備品が、自分達で加工した「収納ケース」に収められ、「表示」がされていた。
細かい部品や部材を使う企業なのだが、ほぼすべての棚の「表示」が完了していた。
「再配置」された工場の「機械」の「表示」は、マグネットが使われていた。
「これ、何?」
「工作機械なので、油がついていたりサビが出たりしているので、普通のシールじゃはげてしまうので、マグネットを後ろに付けました」
一番若い推進メンバーであるO君がそう答えてくれました。
「このように表示をします」などと、コンサルティングの最中に言った覚えはありません。「表示」の目的を伝え、他の企業の事例を見せただけです。そして「彼らが自分達で考え、自分達で決め、自分達でした」のです。完全に「やらされ5S」から「自分達の5S」へ進化していました。
専務や部長と話してみると、途中で随分「推進メンバーたち」は悩んだらしい。しかし、その「悩んだプロセス」が、組織の中で「うねり」を作り、他の社員達を巻き込んだ活動にしてしまいました。
夕方、マンションに帰り着くと、「推進リーダー」のY君からこんなメールが届いていました。
戸敷先生
今日は5Sの方向性が確認できて自信がもてました。
ありがとうございます。
先月行いました、社内アンケートの内容を送信致します。全社員、匿名で記入してもらい、部屋別にまとめた物です。
自分達の視点では気が付かない他の部所の意見がたくさんでて、今後の整頓の参考になりレベルアップにつながればいいと思ってます。Y
さて、「改善活動」はその組織が続く限り進めなければなりませんが、今回の【プロジェクト】も半分まで来ました。ほぼ同時期に「限界利益」管理の準備も整いつつあるので、これから一気に【プロジェクト】が進みます。こうして「若者たち」が育ち、その「若者たち」を支えた課長達がいて、辛抱強くそれを見守っている専務がいます。
私自身も、コンサルティングの方向性の確認が出来ました。とても気持ちのいい午後を過ごしました。
さて、弊社(経営改善支援センター)のサイトで最もアクセスが多い「5Sギャラリー」を正式公開しました。組織活性化に取り組んでいる企業の「写真」や「動画」を見ることが出来ます。ぜひ、ご覧下さい。
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コラムに掲載して頂き有難うございます。
正直、思った以上に評価して頂き驚いています。しかし、戸敷先生が見ていない部分でまだまだダメなところが多数あるので、みんなで知恵を振り絞って5S活動が完璧に達成できるよう、実行、修正、また実行していきたいと思います。
マグネットのO君
コメントありがとう。
いやぁ、最初訪問した時の「グチャグチャ」からすると、まるで「別の工場」です!
自分達のしている仕事の意味が分かり、本当の意味での「働きやすさ」を考えると、知恵も出てくるねぇ。うーん、「75点」!(これ、かなり高い評価ですよ!)
まだまだ先は長いですが、頑張りましょう。
とじき
お忙しい中での会社訪問、ありがとうございました。
先生、褒めすぎです!先にコメントされた↑の方なんかは、今日の5S会議の冒頭で”司会を務めるマグネットの○○です”などと調子に乗る始末です。
やらされ5Sから自分達の5Sですか・・・
そういえば最近あまり5S活動についてリーダーさんやメンバーさんから相談されないような・・・
とにかく、お忙しい中での数時間にも及ぶ会社訪問&充実したご指導にはとても感謝します。
まだまだこれからですので、引き続き宜しくお願いいたします。
お公家さん? さま
いやいや、「現場」の方は頑張っていますよ。長崎のIさんや伊万里のIさんという「お手本」があるとは言え、一回目でここまでレベルが上がるとは思っていませんでした。
組織は「1ミリ」浮かすのに苦労するのですが、浮いてしまえば、5センチでも、50センチでも、場合によっては1メートルでも浮きます。
間違いなく、1ミリは浮きました。(動けるようになりました)
さて、これからは【限界利益】ですよ。一円を拾う、一円を落とさない仕組みづくりに入りましょう。
とじき
改善活動中は大変な時期もありますが、整頓と表示が進むにつれ、便利さの実感と自信が沸いてきました。全社一丸で日々継続していき、更に改善を積み重ねていきたいです。
「指針リーダー」Y さま
何がうれしかったかと言うと、パートの「おかあさま方」が明るかったこと、です。
全社一丸をどこで見極めるか、と言うと「組織の最先端」なのですが、パートの方たちが嫌々仕事をしていなかった。つまり、活動が表面(見かけ)だけではなく、「組織の中心」を通っていたと言う証拠です。
一番の課題である「生産性向上」に向けて、頑張りましょうね。まぁ、どの「プロジェクト」も途中で大変なことはありますから!明るく、前を向いて行きましょう!!
コメント、ありがとう。
とじき
お忙しい中の会社訪問、ありがとうございました。うちの部署に入られての戸敷先生の第一声がなんと言われるか、内心ドキドキしておりました。が、「明るくなったねー」で始まり、「広くなって、スッキリしたねー」とお褒めの言葉を頂いた時は、内心ほっとしたと同時に、会社一丸で取り組んでいる結果が評価されたのを嬉しく思ってます。しかし、このままで終わるのではなく、もっと活動を進化させてこれ以上のものを作っていきたいと思います。
刃材加工 Tとパート一同 さま
土曜日に、メンバーだけ出社して「頑張った」のを知っております。誰も見ていないところでも頑張った姿は、誰かが気付いています。そして、それが呼び水となって、次の誰かを少しだけ動かします。その小さな動きの積み重なりが、「活動」でもあります。
「狭い」ということが理由にはなりません。狭いなら、狭いなりに・・・・。いい作業場になりました。さて、次はいよいよ「生産性の向上」ですね。頑張りましょう。
コメントありがとう。
とじき