司馬遼太郎という作家は「言語」に関して緻密な考え方を持った作家でした。彼の随筆や講演録を読むとそのあたりのこだわりが濃厚に随所に現れています。

 

【精神を表現するには生活用語だけでは足りません】

という言葉が、彼の講演録の中に出てきます。生活用語とは、お父さんが家に帰ってきてお母さんに「風呂」「飯」「寝る」といった使い方をする言葉です。

「水とか風呂とかは生活用語です。こういう生活用語を、主語を抜かし、ひどい時には述語まで抜かし、単語だけで言う。こういうぞんざいな言葉では、高度な文化はできませんね」(朝日文庫 司馬遼太郎全講演4 日本の言語教育より)

 

組織の中で気をつけなければならないことは「丁寧さ」です。年齢もキャリアも出身も違う人間たちが一同に会し、共通の目的を果たすために動いている時にぞんざいな言葉を使用すると、組織は混乱します。混乱するだけではなく、誤解を招き、対立を生みます。対立が表面化してしまうと残っているのは感情だけですから生活用語に近い「感情用語」だけです。

 

「好かん!」

「嫌いだ!」

「つまらん!」

「馬鹿じゃねぇか!」

「大したことじゃねぇ!」

「ほっとけ!」

「出て行け!」・・・

 

主語を抜かし、ひどい時には述語まで抜かし、単語だけ・・・。

実はこうした「ぞんざいな組織」は、少なくないのです。

 

組織で大切なことは「丁寧さ」です。

特に「言葉」には気をつけなければ、きちんとした意思疎通ができません。幹部はそうした不用意な混乱を避けるために、丁寧に様々なことを【定義】しなければなりません。

弊社における「利益」「協力」「コミュニケーション」「会議」「報・連・相」「目的」「目標」・・・。

そして、「組織課題」という言葉も【利益阻害要因】というわかりやすい言葉に置き換えてあげる必要があります。大上段に、弊社の組織課題はなどと気取っているから、本当の課題が見えて来ないのです。

「利益阻害要因とはこういう意味である」「では具体的にセクションやプロセスで考えてみよう」

と丁寧なアプローチをしてあげると、いくつもみんなから生活用語ではない言葉が出てくるのです。

手元に3社分の「利益阻害要因」の抽出表があります。出てきた言葉は間違いなく「組織のツボ」を押さえています。

「今まで各支所ではタブーだったようなことが表に出てきていますね」

昨日、ある組織の方とそんな会話を交わしました。

【利益阻害要因】は生活用語ではありません。高い問題意識と危機感を共有していなければ理解されない言葉です。組織成長のプロセスの中で避けては通れない言葉と概念です。多くの組織が「利益阻害要因」の抽出とその対策に力を入れています。