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宮崎の自宅周辺の、極めて狭い地域において、限られた人たちの中で、私の息子は少々有名人であるらしい。20年以上通っている理髪店で
「えっ!とじきさんは、○○君のおとうさんのとじきさんなんですか!」
と、数年前のある日、奇妙な驚かれ方をされて、こちらのほうが面食らってしまったことがある。もちろん、○○君が私の息子の名前です。
「おい、とじきさんは、○○君のおとうさんのとじきさんだってよ」
と改めて、理髪店で一緒に働く奥さんに紹介されても、20年以上も前から知っているのでどうやって挨拶していいかわからないではないか。おまけに自宅にいる3人の息子をわざわざ呼びに行き
「おい、このおじちゃんは、○○君のおとうさんだ。○○君、知っているだろう。ちゃんと挨拶をしろ!」
と言い出すからこちらは困ってしまう。

実は、そこの息子たちは近所の空手道場に通っていて、私の息子はその道場の副支部長をしているのでした。もちろん息子は現在東京の大学へ通っているので、道場に常駐しているわけではなく、休みの時に帰省した時に道場に立つくらいなのですが、小学生たちの指導は息子が高校生の頃からやっていたらしく、子供たちの中では知らないものはいないようです。おまけに大学2年の時、モスクワ大学に留学しているので、その話が子供たちの間には広まっていてなおさら有名人なのだそうです。決して運動神経の良い方ではなかったのですが、小学1年から高校3年まで12年間空手道場に通った息子は、高校1年で黒帯を取り、現在は二段です。当然、父親の私は彼が中学1年の時までしか手を上げたことはありません。まぁ、彼が軽く蹴ったくらいで、私は3メートルは吹っ飛びそうですから、すべて平和的会談で事を進めなければ親の私が怪我をしてしまいます。

そんな関係で、散髪屋に行って椅子に座るなりご主人も奥さんも「○○君は元気ですか?」という話になります。
昨年末は、いよいよ散髪屋の長男が高校進学で色々心配したようですが、今春志望していた地元の高校へ入学をしました。宮崎出身のモデルのエビちゃんこと「蛯原友里」の出身高校である理数系高校です。

「そりゃぁ良かった。あそこは就職率も良いという話なので、何よりでしたね」
長男が入学したという話を聞いて奥さんにそういうと、奥さんがこんな話をしてくれました。
「それがねぇ、とじきさん。ずっと就職率が良かったらしいんですが、五年ほど前に面接試験の会場で、その高校の出身の男の子が、試験を待っている間【うんこ座り】をしていたらしいんですよ。そしたら試験官から、君は何をするためにここに来ているんだい、と叱責され、その年その会社は全員不合格だったそうです。毎年4人か5人は採用をしてくれていた会社らしいのですが、その年から採用は全くないそうです。先生が、そろそろ再び採用してくれないかとお願いをするそうですが、だめらしいですよ」
「・・・・・」
「入学式の時、先生が子供たちに【勉強】だけではなく、【日頃の行い】にも気を配るようにって言ってましたよ。」
「うーん、面接会場で【うんこ座り】ですか・・・」
仕事柄、なんとなくイメージの沸くシーンでもあります。
そろそろ、声を大にして若い世代に向かって言わなければならないことがあるのかもしれません。

「きちんとした服装をしようね」
「なぜですか。自分の好きな格好をして何が悪いんですか」
「プライベートな時間ならいいけど、ここは職場だからね。きちんとしておかなければだめだよ」
「この会社、服装の自由もないんですか」
「・・・・」

「仕事が終わったらきちんと片付けようね」
「なぜですか。どうせ明日も使うんでしょう。出したまんまでいいじゃないですか」
「片付けておかないと掃除もできないし、メンテもできないからね」
「この会社、めんどくせぇことをさせるんですね」
「・・・・・」

「電話の応対はきちんとしようね」
「なぜですか。顔なんて見えないんだから、適当でいいじゃないですか」
「そんなことはないよ。声しか聞こえないから、きちんと対応しなければ印象が悪くなるよ」
「客の機嫌を取らなくちゃいけないんですかぁ」
「・・・・」

「うちの会社は5S活動を行なっているから、ルールを守ってくださいね」
「なぜですか。給料分は働いていますよ。余計なことさせないでくださいよ」
「・・・・・」
「もっと自由に働かせてくれないと成果も出ませんよ」
「自由って、どういうことだい」
「えっ?」
「勝手にさせろっていうことかい」
「・・・いいえ、そういう訳じゃないんですけど・・・」
「おい、給料はどこから出ている?」
「・・・・ええと、利益からです」
「その利益は誰が出している?」
「うーん、みんなで出しているんでしょうか」
「そうだ、みんなで頑張って利益をだそうとしている時、君は勝手にさせてくれって言ってるわけだ」
「いや、そういう訳じゃなくて・・・」
「こらぁ、ガキィ!いいかげんにしろよ。人口が減っているのを知っているか。円高が進んでいるのを知っているか。業界が収縮しているのを知っているか。全国の倒産件数を知っているか。売上が落ち始めているのを知っているか。以前より利益が残らなくなっているのを知っているか」
「・・・・・」
「こらぁ、黙ってねぇで、ちゃんと答えろ!答えてみろ!」
「一応知っています」
「おう、知っていて何故決め事が守れないんだ。会社の全員の生活がかかっているというのに、てめぇだけは関係ねぇって言うのか!いいか、駄目なものは駄目なんだ。面接会場で【うんこ座り】をしたために、その年の受験生だけではなくて、後輩たちが何年も採用してもらえないという無様なガキになりてぇのか!」
「・・・」
「いいか、どんなに時代が変わっても、駄目なもんは駄目なんだ。それくらいのことは判れ!!」