とじき雑感

失われた「プロセス共有」

    あるIT系企業でこんな話を聞きました。   「組織の中で意識の違いが大きくていろいろと問題が起こっています。創業メンバーやその時に仲間に加わった連中はいいのですが、その後から入った連中との意識のずれがあって、組織がしっくりと来ないんですよ。どうしたものですかねぇ」

    別の組織ではこんな現象が起きています。以前の組織が傾いて、その後ある企業と合併を果たし、再び業績が上がったのですが、その中で「苦難の時期を共にした人たち」と「業績を回復した後に入った人」との間に大きな溝が生じているのです。例えば、以前にはなかった手当が付くようになって以前からいた人たちはありがたいと思っているのに、あとから来た人たちは安い、と不満を募らせているのです。
    こうした現象が起きている理由は、組織の中に【プロセス共有】というコミュニケーションにおける重要な要素が希薄になっているという背景があります。【プロセス共有】とは、共に働く人たちの間での「達成」までの共通の体験のことです。小学校や中学校の友人ちとの関係が何も気を使わず、長い期間維持できるのはこの【プロセス共有】というコミュニケーションの本質を踏まえているからです。

    同様に、組織においてもこうした【プロセス共有】が必要です。

    偽りの「経営計画書」

    「毎年、経営計画書を作っているんですが、まともにそれを達成したことがないんです。あんなの意味は無いですね」という経営者がいます。「経営計画なんてどうせ【絵に書いたもち】なんだから作ったって一緒だろ」という経営幹部がいます。詳しく聞いてみると、経営計画を社長だけで作ってみたり、何回かの幹部会議で数字合わせとして作っているようです。
    逆に、組織活動の統制が取れて顕著な業績を残している組織の経営計画書「作成プロセス」は、何度もの幹部会議の後「、役員や幹部」が合宿をしてへとへとになりながら作り上げています。当然「経営計画発表会」の時の経営者や幹部たちの言葉には力がこもっていて、なおかつ魂が込められているので、組織の中に強く浸透しています。四半期の計画検証や部下たちからの疑問にも、役員や幹部たちが明確に答えることが出来るのです。
    これはまさに会社の将来に関するアプローチについて【プロセス共有】がなされているということです。

    体の中を通った言葉

    組織が健全に機能するためには、コミュニケーションが大切です。コミュニケーションの大元は言葉です。組織を活性化させるために様々な取組を行いながらなかなか成果が上がらないのは、その時に「体の中を通った言葉」すなわち【プロセス共有】がなされていないからです。
    創業ではない企業が【プロセス共有】を行うためには、丁寧な全社的取組が必要です。

    現代の【プロセス共有】を行うひとつのツールが「5S活動」です。整理・整頓・清掃・躾(しつけ)というシンプルな要素を組織特性に応じてシステム化する活動は、全社を巻き込んだ活動になります。経営者や幹部、中堅、一般という職位を越えて、世代を超えて、部門や部署というセクションを超えて、全社で完成までの【プロセスを共有】して頂ければと思います。

    弊社では、毎月第一水曜日に「5S活用術セミナー」を福岡で開催しています。時代変化〜組織活性化の必要性〜5S活動の意味〜継続できない理由〜失敗事例・成功事例〜利益管理など、様々な中小企業が取り組んだプロセスを理解し自社に置換えてみる機会でもあります。開催日時場所等は、弊社ホームページを御覧ください。

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