「5S活動」に対する誤解は、教育制度にあるのではないかと疑ってます。
学校を出て、もう随分になるので最近の事情はよく分からないのですが、「整理」「整頓」などという言葉の意味を、子供の頃は【道徳】という時間に習った覚えがあります。当時の【道徳】の時間では、「勤勉」「正直」「節約」などと同じように「整理」「整頓」を習いました。つまり、「徳目」に近いところで「整理」「整頓」という概念を教え込まれました。

「5S活動」は、「整理・seiri」「整頓・seiton」「清掃・seisou」「清潔・seiketu」「躾(しつけ)・situke」という言葉をローマ字で書いたときに、頭の文字が全て S で始まることから「5S活動」と名付けられました。本来は、生産効率を高めるために、製造系企業が「3S(整理・整頓・清掃)活動」を行ってきた流れに「2S(清潔・躾)」を加えたものです。
発祥が、製造系企業である以上、「3S」も「5S」もれっきとした【技術】なのですが、どういうわけか多くの企業が「片付いた雰囲気」として「5S活動」を捉えています。原因は、冒頭の学校教育にあるようで、【道徳】の中で教えていた概念が影響しているようです。

また、戦前からの特殊事情もあったのです。
欧米から、「ウサギ小屋」と揶揄された日本家屋は、今から想像も付かないくらい「合理的」な建造物でした。ある一定の年代以上の方々なら想像はつきますが、昔の日本の家屋は実に「リバーシブル」なつくりになっていたのです。
家族が団欒をしている時には、部屋は「居間」として機能する。
母親が「ご飯ですよ!」と声をかければ、ちゃぶ台がどこからともなく現れて、あっという間に「ダイニングルーム」に変身をする。
食事が終わり、食器を片付けたあとは「リブングルーム」。
夜も更けると、押入れから布団を引っ張り出し、瞬時に「寝室」に変わる・・・・。
日本人の「知恵」と「英知」があふれていた住環境を維持するためには、実は「整理」と「整頓」が不可欠なものでした。よって、改めて「整理技術」や「整頓技術」として子供たちに伝える必要もなく、ごく自然な流れとして、日本人として当たり前のこととして受け止められていたのでした。だから【道徳】の時間にさりげなく伝えればよかったのです。

その日本人を「駄目」にしたのが、「ベッド」の侵入でした。
戦争に負け、欧米化促進の中で、もっとも悪辣な代物が「ベット」でした。「ベット」を取り入れた途端、日本の住居は「合理性」を失い、部屋を「寝室」として固定してしまいました。固定した瞬間、瞬く間に空間は自由を失い、「整理」や「整頓」という概念も失われてしまいました。新たに出てきた概念は、欧米流の「綺麗」です。
「綺麗」であれば許される。「綺麗」が住環境の新基準となり、「見かけ」が大事な時代を創り出してきました。

そうした時代変化の中で、改めて「5S活動」を見直す必要があります。

組織にとっての「5S活動」は、実は【緊張感のある組織】を作り上げるための「手段」なのです。売上が落ち、利益があげづらい時代にあって「一円を拾う」ために、組織には「緊張感」が必要なのです。単に使いたい道具を探すことなく見つけ出すだけではなく、組織のトップが方向性を示したら、組織が一丸となって動くシステム構築の「手段」として「5S活動」は存在します。
それを「ベット」導入後の日本人のように「綺麗」という観点から眺めてしまうので「組織活性化」が進まないのです。
【緊張感のある組織】とは【戦える組織】と同義です。
命を懸けた組織である「軍」では、服装から、挙措動作、機材の手入れ、指揮命令、全て「整理」「整頓」「清掃」「清掃」「躾」から構築されています。その底流にある思想は【戦う組織】としての強烈な自覚です。
何も企業を「軍隊式」にしろと言っているのではありません。事業規模、職種、業態に応じた「戦い」のためのシステムとして語っています。

弊社の「組織活性化プログラム」では、その「5S活動」を、【対内緊張】【対外緊張】と表現をします。
「戦う」ための【対内(組織内)緊張】、「マーケティング」のための【対外(組織外)緊張】です。
実は、「5S活動」の最先端は「マーケティング」にまでつながります。他社との差別化、顧客の印象、新規事業への取り組み、そうしたものは「組織内に緊張感を持ちつつ」、「組織の外へ気を配る」【躾(しつけ)】られた組織でなければ、達成できないのです。「ベット」を導入して、本当の意味での「合理性」「機能性」を失った目には「綺麗」さだけしか写りません。時代が大きく変貌を遂げる時、組織のトップや経営幹部たちに問われるのは、「本質」を見抜く力です。

「5S活動」を「綺麗にすること」などと考えていると、とんでもない間違いをしでかします。
「5S活動」導入の「手順」や「失敗事例」「成功事例」は、組織活性化のための「改善DVD」に収められています。他社事例を参考に、新年度の取り組みの中にぜひ組み込んでください。

中小企業に残された時間は、そう多くないと思っていたほうがよさそうです。それほどに時代変化の速度は高く、同時に質的変化まで時代は要求し始めています。ここ半年で新たな「マーケティング」までたどり着いていなければ、中小企業に吹き付ける暴風雨をしのげないと思います。