組織活性化コラム

「情報鎖国」の始まり

    不可解な風景

    お気づきだろうか。最近、ニュース番組から「海外情報」がすっかり消えてしまいました。
    未曾有の大災害があったのですから、国内の話題にテーマが集中するのは仕方のないことです。被害を受けた地域では今も十万人を超える人々が避難生活を続けていますし、原子力発電所の事故は、収束の見通しがまったく見えてきません。おまけに、政府関係機関や電力会社の「説明」はあいまいで、おまけに発表の時期は遅く、おまけに不正直です。国全体に、漠然とした不安が広がり、そこにつけ込むように、流言飛語も飛び交います。
    その時に一番重要なことは「正確な情報」なのですが、これがまたどこにあるのかが分からない。不安が不安を呼び、人々を落ち着かなくさせています。

    こうした時「海外情報」は、ある程度客観的に物事を判断し、われわれの理解の手助けをしてくれるはずなのですが、これが昨今の報道からは、綺麗に消えてしまっています。散々「グローバル化」が叫ばれていたのですが、その面影は現在の日本にはありません。ある意味、江戸時代と同じように「鎖国」をしていて、世界の動きをまったく知らない本当の意味での島国になってしまったような感があります。

    世界の見方

    くしくも、「統一地方選挙」の終了を見計らったように、福島原発被害の国際評価を「レベル7」に引き上げる、という発表がありました。国民の安全や健康に直接関わることなので、迅速な判断と発表が必要なのですが、これもまた随分と遅い発表となりました。朝から注意して、テレビやラジオの放送を気にしていたのですが、メディアは思ったより切迫感がなく、ほぼ通常と変わらぬ放送でした。
    そして、当然のように、海外の反応などは報道されませんでした。

    ~米ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)「データは現在も過小評価されていないのか。今回のレベル引き上げは、こういった点について新たな疑問を投げかけた」
    ~韓国のハンギョレ新聞(同)「日本はチェルノブイリ原発に次ぐ事故と分かっていながら、レベルを低めに発表していたのではないかという疑惑も出ている」
    ~台湾紙・経済日報は12日の社説で、日本側が周辺国・地域との情報共有に積極的になるよう共同歩調で圧力をかける必要性を説いた

    実は、海外メディアの今回の原発に関する報道は、厳しいものがあります。特にヨーロッパは、チェルノブイリ原発の体験があるので、特に強く反応しています。しかしながら、そういう論調は、日本には届きません。
    すでに世界各地で、日本食品の輸入規制が行われているのですが、これもまた一般的には報道されてはいないようです。米国や香港が同原発に近い地域で生産された食品を対象に禁輸を実施していますが、新たに中国、台湾、韓国、シンガポール、オーストラリア、フィリピン、ロシアが輸入を停止するなどの規制を決めました。
    今回の「レベル7」の発表で、食品だけではなく、広く日本製品が敬遠されつつあるという情報も、積極的にメディアからは聞こえてきません。

    判断は「自分」でする!

    さて、「情報」は待っているだけではやってきません。積極的に「アンテナ」を立て、時に自ら「情報発信」をしなければ、「情報」を手にすることは出来ません。そして、手に入れた「情報」も自ら「分析」「解析」しなければなりません。
    今日(4月12日)の政府機関の
    【福島第1原発から放出された放射性物質の量はチェルノブイリの1割程度】
    という発言のおかしさも、きちんと理解しておかなければなりません。日本の平均人口密度は343人/m2です。それに対して、ロシア(旧ソ連)の人口密度は、8人/m2です。42倍も人口密度が違うのに、「1割なのでたいしたことではない」という論調のおかしさに気付かなければなりません。当然、チェルノブイリでの被害はたいしたことはなかった、という大学教授の話も、こうした数字を頭の中に入れておかなければ、判断を間違います。

    日本気象学会の理事長(東京大学教授)が、大気中に拡散する放射性物質の影響を予測した研究成果の公表を自粛するよう会員に通知をしました。
    どういうわけか、政府は長く問題点が議論されてきたコンピュータ監視法案を閣議決定しました。
    朝、サイトで見かけた【都内で放射能を測定した「動画」】が、夕方すべて綺麗に削除されていました。

    どこにどんな「情報」があるのか。
    流れている「情報」の背後には、何があるのか。
    なぜ、こんな「情報」が出てこないのか・・・・・。

    「情報」の収集も分析も、自分の手で行わなければなりません。
    「情報鎖国」の時代が始まっています。

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